原因は自分にある。飛躍の年の最後に観測者との距離をギュッと縮めた、ファンミーティング『ゲンジブの、ゲンジブによる、ゲンジブのための集い』を開催!



哲学的な歌詞で綴られた独特の世界観とネットカルチャー発の最新サウンドを軸に、2次元と3次元を行き来する新時代のエンターテイメントユニット・原因は自分にある。(通称・げんじぶ)が、東阪2ヶ所でファンミーティングを開催。その名も『ゲンジブの、ゲンジブによる、ゲンジブのための集い』を12月22日にZepp Osaka Baysideで、12月28日にZepp Haneda(TOKYO)で行った。グループ初のアリーナ公演も叶えた2023年の最後に、観測者と呼ばれるファンを楽しませるべく、ファンへのアンケート結果を元にセットリストを構成したイベントでは、普段のライブとは異なるアットホームな空間を演出。1月はパシフィコ横浜、11月にはぴあアリーナMMワンマンと、飛躍の年の最後に観測者との距離をギュッと縮めるステージで、満員のフロアに笑顔の花を咲かせた。



オープニングSEも映像もなく、ギターとピアノの音が鳴るなり突然「1、2、3、4!」とステージの上段に7人が登場して、「放課後ギュッと」でライブが幕開けると、観測者で満杯のスタンディングフロアは大騒ぎに。リリース時に『仮面ライダーギーツ』の撮影でグループ活動を制限中だったため、この曲をステージでパフォーマンスするのは初めてになる杢代和人が「2023年、僕たちと一緒に締めくくる準備できてますか?」と呼びかければ、客席のペンライトも一斉に振りあがる。学校生活をモチーフに、若さあふれるポップで可愛い「放課後ギュッと」を1曲目に持ってくるのも、いつもよりオーディエンスとの心の距離が近いファンミーティングならでは。ライブ冒頭から場内の温度はダダ上がりだ。さらに、おなじみのダンスポップ「ギミギミラブ」へとなだれ込めば、観測者の “炭酸水!”の声が飛び、小泉光咲が「皆さん一緒にクラップお願いします!」と告げるまでもなくクラップの嵐に。そんな観測者の熱さにあてられてか、ステージ上のメンバー同士も普段より距離が近い。



見渡す限り観測者で埋め尽くされたフロアの様子に、長野凌大が「しんどくなっちゃったら、みんなで助け合って。水分補給しっかりして」とフォローしてからは、今回のライブに先立って、ファンクラブ内でアンケートが実施されたことを説明。その結果を元にセットリストを構成したという、まさしく観測者参加型のライブになっており、まずは『あなたとげんじぶの出会いの曲は?』というアンケートで最も得票を集めた曲へのコメントが、いくつかビジョンに表示された。“TikTokで流れてきた”“イベントで観た”“テレビを流し見していて耳に残った”“アイルランド留学中に知った”等、観測者の出会い方も実に多彩。果たしてこれらのコメントが指す正解曲は?ということで、パフォーマンスと共に明かされた正解は、もちろんセルフタイトルのデビュー曲「原因は自分にある。」だ。ピアノロックに早口で綴られる哲学的な歌詞という、げんじぶの個性を確立した楽曲は通常シリアスなモードで披露されるが、大倉空人は柔らかな笑顔から真顔へと瞬時に切り替える見事な表情管理で観測者を悩殺。



続いてのお題は『”陰”だと思う曲の中で一番好きな曲は?』と『”陽”だと思う曲の中で一番好きな曲は?』という正反対の2問。前者に対しては “湿度が高そう”“大人っぽい”“音の創り全てに陰を感じます”といったコメントが、後者には“全員が大好きで大盛り上がり出来る”“可愛い笑顔で踊ってるのが好き”“普段イヤホンで聞いていても声を出しそうになる”といった感想が表示された。結果、披露された“陰”の曲は「豪雨」。床を揺らすように響く低音から、テンションを深く沈みこませて“帰れないよ”と歌い上げ、狂おしくステージに立ち込めるスモークは肌を刺すほど冷たく映る。そこからは小泉のファルセットで、一気に“陽”の曲「GOD 釈迦にHip-Hop」へと急転。「みなさん、楽しんでいきましょう!」と桜木雅哉が号令をかけて、ゲンジブの“隠れ自己紹介曲”で明るく跳ねる彼らに、客席からは大きな掛け声が飛ぶ。曲中「今年もありがとう!」と笑顔を見せた杢代は武藤潤や吉澤要人と一緒にステージ上でぐるぐる追いかけっこをして、最後は観測者と“き・き・きすみー!”と大合唱。あえて陰と陽に振り切ることで、げんじぶのふり幅を示し、ポテンシャルの大きさを証明してくれた。



東京公演では会場のZepp Hanedaが空港に近いことにちなみ、『空の上で聴きたい曲は?』というお題も。“ピアノのイントロが美しい”“綺麗な青空の頭の中に浮かぶ”“空から世界を俯瞰してるみたい”“孤独で、でも、たくさんの人の希望を背負ってるみたい”等、観測者から寄せられた文学的なコメントに、最年長の武藤も「難しい言葉がいっぱい……」と混乱。さすが哲学的な歌詞が多いだけに、げんじぶはファンのワードセンスもハイレベルのようだ。そうして始まったのは「青、その他」。コメントの通り美しいピアノから始まって、武藤はBメロで長野と、2番では桜木と美しいハーモニーを奏で、サビを担当する小泉や杢代へとつなぐ。まさに、脳内に青空が浮かぶ爽やかなナンバーで、とても清々しいのにどこか切ないのは、なるほど“孤独”に通じるからなのかもしれない。観測者の視点を通すことで、楽曲をまた別のベクトルから読み解くことができるのは、げんじぶ楽曲の懐の深さゆえだろう。



続いては、メンバーから連想される楽曲を披露するコーナーに。公演ごとにピックアップされるメンバーが替わり、東京公演では『吉澤要人といえばこの曲』と『杢代和人といえばこの曲』のお題が選ばれた。2人とも「みんなを惚れさせたいと思います」と競い合っては、結局「2人で惚れさせよう」と、なぜか杢代が吉澤の頬にキス。最終的に前者では吉澤がリードボーカルを担うチルポップ「蝋燭」、後者では杢代の演技が黄色い悲鳴を呼ぶ「半分相逢傘」が披露された。「蝋燭」は吉澤の低音の上に小泉や長野らの歌声が代わる代わる乗っていく、まさしく吉澤がいなければ成り立たない楽曲で、カメラに微笑みながら届ける艶めかしい声音に、誰もが骨抜きになってしまう。“いつも低音で曲を支えている要人くんがメインで歌っていて、綺麗な低音の歌声をじっくり楽しめます。ゆったりした曲調も要人くんにぴったりです”という観測者からの意見も納得だ。加えて、この曲も振り付けがパフォーマンスされるのは今回が初。ひっそりと揺らめく蝋燭のように、抑えたエモーションの中に漂うユルさと緊張感のせめぎ合いが心地よい。

「半分相逢傘」は頭から杢代、長野、桜木が床へと寝そべる斬新な振り付けが、何やらただならぬムードを醸す禁断の恋の歌。曲中で女性と掛け合う台詞に、これまでさまざまなメンバーがトライしてきたが、今年1月のパシフィコ横浜ワンマンで杢代が自身のソロパートとして挑んだ際、とんでもなくマッチして場内の阿鼻叫喚を呼んだのは記憶に新しい。今回は“俺のこと好き?”と聞きながらも、相手から問い返されると“え? 俺?……どっちでもいいでしょ”と返して、自分勝手なのに途方もなく魅力的な男性を演じてみせた。観測者の“大人な妖艶な曲をこの若さで表現できるのは杢代和人がレベチイケメンたる所以ではないでしょうか”というコメントも然もありなん。また、激情を寸前で抑え込むような長野の歌いまわしや、杢代と武藤でボーカルを重ねるエンディングも聞きどころだった



そして、今回のファンミーティング一つのの見どころであり、大倉いわく「僕たちがとてもドキドキする企画」が『今日の僕は何色?メンバーカラーチェンジ!!』なるコーナー。7人でくじを引いてメンバーカラーをシャッフルし、変更後のメンバーカラーの性格、歌割り、フォーメーションで、1曲を披露しようという企画だ。大阪公演では成功できなかったとのことで、今度こそ!と抽選ボックスからカラーボールを引いた結果、桜木が緑の杢代、杢代が紫の吉澤、長野が黄色の大倉、吉澤がピンクの桜木、小泉が青の長野、大倉が赤の武藤、武藤が白の小泉になり切ることに。衣装まで変更後のメンバーのものに着替え、桜木は曲中の決め台詞について「せっかくなら変えたい! 杢代さんが言いそうな言葉を下ろしてこようかな」と意気込む。白をあしらった小泉の衣装を着た武藤は、「気分はアゲハチョウになったみたい。私を捕まえてみなさい!」とステージをヒラヒラ舞うほどハシャぎ、大倉は武藤の口調を完コピして、長野役の小泉がタイトルコールしたのは「原因は君にもある。」。ライブでもかなりの回数を披露済みで、メンバーの身体に染み込んでいるはずの楽曲だが、それでも立ち位置からおぼつかず、勇んで決め台詞を発しようとした桜木は「俺、観測者……」と噛んで、コントのように崩れ落ちる一幕も。曲が終わって「本当は“俺は観測者しか見えてねーから!”って言おうとしてたんだけど……」と意気消沈した桜木は、杢代に「最高だったよ!」と励まされ、最後に台詞のリベンジをして観測者の歓声を浴びた。



ここからは、げんじぶが発表してきたMV全20曲のうち、本日来場した観測者たちがQRコードから投票したトップ3を発表。第3位の「無限シニシズム」、第2位の「チョコループ」に続き、第1位を獲得した「ジュトゥブ ル ボヌール版」のMVが流れると、たった3年前の作品にもかかわらず、ビジョンの中のあどけない彼らに“可愛い!”の声があがる。その間に白を基調にした衣装に着替えた7人は、ウィンターソングの「スノウダンス」をドロップ。YOASOBIのAyaseが提供したエレクトロなメロディ感といい、“さよなら”を歌うリリックといい、切なさを極めたナンバーに視覚からも“真っ白な世界”を広げて、真冬の底冷えする寒さを美しさに変える。



一転、歪んだギターが鳴って始まった「Foxy Grape」は今年の6月に発表されたシングルだが、これまた7人でのパフォーマンスはこれが初。ようやくの完成形はフォーメーションの密度も、切れ味鋭いダンスのシンクロ具合も見ごたえ十分で、今後のさらなる進化を予感させた。続く「Museum:0」も、11月のぴあアリーナMMでのワンマンのために作られたナンバーだが、当日は大掛かりな移動ステージでの披露となったため、フルパフォーマンスされるのは初めて。攻撃的なヘヴィロックにエキセントリックなピアノが絡んで創り上げる底知れない世界観に、力強いダンスで挑んでいく彼らの後ろでは火花が滝のように流れ落ちて、壮大な世界を作り上げた。特に、この時の白衣装はぴあアリーナ公演のキービジュアル用に作られたものだったこともあり、そのフォーマルな趣きと楽曲とのリンク性もバッチリ。今回のファンミーティングでは、衣装も観測者の投票で公演ごとに選ばれており、こんなところにも”観測者と共に作るイベント”へのこだわりが窺える。



ここで杢代が「2024年も僕たち突き進んでいくので。上に昇る準備はできていますので、応援よろしくお願いします」と挨拶すれば、吉澤も「今年はいろんなステージに立たせてもらって、すごくげんじぶ愛が深まったなぁって。愛すべきグループ、愛されてるグループだなぁって感じます。来年も観測者、誰一人置いていく気はございませんので、ついてきてください。必ずついてこさせます!」と宣言。その第1弾として、2024年3月13日にコンセプトEP『仮定法のあなたへ』をリリースすることを、長野が告知した。「全6曲、すべて“if=もしも”の世界がテーマになっていて、いろいろなげんじぶが見られる」とのことで、1月21日の埼玉県を皮切りに、3月13日のリリース日まで全国7箇所でのリリースイベントも決定。メンバーとゆったりとした時間を優雅に楽しむことができる“ロイヤルサイン会”も200名限定で予定されており、「大きくなりながらも、みなさんの近くにいられることも大事にしたい」という嬉しい言葉を聞かせてくれた。



そんな彼らの想いは、ラスト楽曲にも反映。パシフィコ横浜からぴあアリーナMMへと向かっていった2023年を振り返り、「観測者がいてくれたから素晴らしい舞台に立つことができました。来年もゆっくりと歩んでいきたいと思います。そんな想いを込めて聞いてください」と武藤が告げて、最後に贈られたのは「時速3km」だった。“うまくいかなくてもね 否定しなくていい”と現状を受け入れ、戻らない時を理解しながら、かけがえのない一瞬を惜しんでいく――そんな優しさは、誰一人置いていかない、観測者の近くにいられることを大事にしたいという彼らの想いと、確実にリンクしている。ステージから姿を消す瞬間まで「来年もみんなの笑顔、見たいな!」「また絶対に来年、ライブでお会いしましょう」と訴え続けた彼らは、より高く飛ぶために、まず、足元を確かめて踏みしめなければならないことを知っている。観測者と生む親密で温かな空気は、つまりは飛び立つための準備が整ったということ。2024年、きっと観測者の手を引いて、さらなる高みへと導いてくれるはずだ。

―set list―
M1.放課後ギュッと
M2. ギミギミラブ
M3. 原因は自分にある。
M4. 豪雨
M5. GOD 釈迦にHip-Hop
M6. ⻘、その他
M7. 蝋燭
M8. 半分相逢傘
M9. 原因は君にもある。
M10. スノウダンス
M11. Foxy Grape
M12. Museum:0
M13. 時速3km


text:清水素子
photo:笹森健一

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