【重岡大毅(WEST.)インタビュー】AIには決して作れない「生身の部分をずっと信じていたい」<映画『5秒で完全犯罪を生成する方法』>



2026年9月11日(水)より全国公開される映画『5秒で完全犯罪を生成する方法』。本作は、現代社会において避けては通れないテーマである「生成AI」と「犯罪」を絡め、緊迫感あふれる完全犯罪の裏側を描いたリアルで不気味なサスペンス・エンターテインメントです。予期せぬ事件に巻き込まれ、AIを用いて隠蔽を図ろうとする主人公・航を演じるのは、WEST.の重岡大毅さん。

Emo!miuでは、主役を務める重岡さんにインタビュー。役へのアプローチ方法など作品のこと、生成AIとの向き合い方、WEST.として俳優としての思いなど、たっぷり語ってもらいました!



テクノロジーの進化への危機感と、AIには作れない「無駄や道草」の価値

■エンタメ業界でもテクノロジーの活用が進んでいますが、重岡さんはその進化をどのように捉えていますか?

重岡大毅(以下、重岡) 正直なところ、怖いなと思います。時間をかけて培ってきた技術の価値が一瞬でなくなっていくんじゃないかって。例えば、少し前にブラッド・ピットとトム・クルーズが戦っている映画のようなAI映像を見たんです。あれを実際に人間が撮ろうとしたらえげつない金額が必要になりますよね。でも、今やクリエイティブに関する知識がない方や小学生くらいの子が一瞬で作れてしまう時代。色々な権利の話などはあるにせよ、認めざるを得ない大きな流れなんだろうなと感じています。

■その大きな流れの中で、生身の人間としてどう価値を発揮していきたいですか?

重岡 僕自身、作詞作曲をしていて、今も量をこなして頑張っているんですけど、「これを続けていって果たして価値があるのかな」という自問自答はあります。僕、20代の時にもっと量をこなせなかったことが、今「呪い」のように自分に降りかかっていて。最近もありがたいことにアルバムのリード曲を勝ち取ったりしましたが、圧倒的に自分の経験値が少ないと感じるんです。だからこそ今、一生懸命曲作りに時間を投資しているんですけど、「時間をかけて培った技術に価値がなくなるかも」と言われたら、何のためにやっているのか正直わからなくなる瞬間もあります。

ただ、よく考えたら、僕は技術が欲しいんじゃなくて、過去の自分にリベンジして「自分に自信を持ちたい」だけなんだなと。一見無駄に思えることに意味を見出した瞬間、それは人間らしさとして輝き出すと思うんです。その“無駄の輝き”こそがエンターテインメントだし、AIには絶対作り出せないもの。僕たちWEST.がこれまで重ねてきた時間や、大阪松竹座での何ものにも代えがたい思い出だってAIには作れません。そういう生身の部分をずっと信じていたいです。

■普段から生成AIを仕事や日常で使うことはありますか?

重岡 めっちゃ使いますよ(笑)! 普段トレーニングをしているんですけど、その時の心拍数などを計測したデータをスクショしてAIに読み込ませて、「もっと僕のことを褒めて!」って送るんです。そうすると「この心拍レベルは素人じゃないです!」ってめちゃくちゃ褒めてくれます(笑)。ただ、これはエンタメのツールとして楽しんでいるだけで、個人情報は絶対に入れないなど、リテラシーや危機感は常に持って付き合うようにしています。

『溺れるナイフ』から続く縁と、一転して「泥沼」にハマった難役



■近藤監督は期待の若手監督ですが、台本を読んだ時や実際の役作りはいかがでしたか?

重岡 最初は純粋に客としてワクワクしながら読んでいました。今回、配給のGAGAさんにお世話になるのですが、僕にとって『溺れるナイフ』という作品は、今33歳になって色々な作品に出させていただく中でも、多くのプロデューサーさんや共演者の方から「あの作品を見て一緒にやりたいと思った」と言っていただける、人生の大きなきっかけになった大切な作品なんです。そのGAGAさんとまたご一緒できること、そして以前もお世話になった脚本の岡田さんの作品ということで、本当に楽しみでした。

台本を最後まで一気に読んで、「AIと犯罪」というテーマがしっかりエンタメに昇華されているなと。それで「やってみたら面白そう!」と思って飛び込んだのですが……そこから一気に泥沼にハマっていきました(笑)。

■「泥沼にハマった」というのは具体的にどのような部分でしょうか?

重岡 現場に入ったら、主人公の兄妹の前にいきなり死体があるんです。普通なら警察に連絡しますよね。でもそうせずに、AIを使って隠蔽しようとする。いざ自分がその役を生きるとなると、「待てよ、なぜこの一歩目を踏み出してしまったんだ?」と考え込んでしまって。本当に大変な扉を開けてしまったなと思いました。

現場では監督を信頼していたので、撮影が始まってからはそこまで話し込むことはなかったのですが、事前に近藤監督が素晴らしいロードマップを引いてくださっていました。刻一刻と状況が変わってどんどん追い詰められて、頭がおかしくなりそうな非日常が続く役なのですが、ずっと重苦しいままだとお客さんも観ていてしんどいはず。

その時に監督が「人はどんな状況にも適応していくものだから、兄妹とで『今日何食べた?』って何気なく話すような、普段のテンションがあってもいいんじゃないか」と言ってくださって。その言葉で、自分の中のモヤがすっと晴れました。監督の『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』という映画も不気味で本当に面白かったですし、このチームだからこそ、色々なことを吸収しながら乗り越えられたと思います。

自分を納得させるために書き殴った、手書きの「呪いのノート」

■航を演じるにあたって、役柄の人物像をどう捉えていましたか?

重岡 一番の根底は「大切なものを守りたい」というシンプルな思いです。そこからどう枝分かれしていくか、という部分が本当に難しくて。正論を言うなら、警察に行って、更生しようとする妹をそばで見守るのが一番あるべき姿じゃないですか。でもそうしない。じゃあ、もし自分に本当に妹がいて、人を殺してしまったらどう思うのか、許せるのか。色々な角度からアプローチしました。

航自身も、劇中で常に激しく揺れ動いていたと思うんです。その手がかりとなる一筋の光を見逃さないように必死でした。これらは脚本に書いてない部分を自分で想像して埋めていく作業で、ある意味自己満足なんですけど、自分が納得して現場に立っている方が絶対に良い表現ができる。本当にものすごいエネルギーが必要な役でした。

■役作りのために、かなりノートに書き込みをされていたとお聞きしました。

重岡 そうなんです。もう「呪いのノート」みたいな仕上がりでした(笑)。頭の中を整理するために書いていたんですけど、観光地によくある「ご自由にお書きください」っていう自由帳ありますよね。濃淡も文字の大きさもバラバラで、英語も漢字もぐちゃぐちゃに書かれている、あの感じがぎゅっと詰まった1冊なんです。

今日の取材に向けて久しぶりに開いてみたんですけど、当時の重い空気感が蘇って「うわ、もう二度とここに戻りたくない!」ってパッと閉じちゃいました(笑)。でもよく見ると、当時の僕が何かを閃いた瞬間にバババッと線を引いていたり、「航教えて」「教えて」「おはよう」「怖いよ。怖いよ。怖いよ。」なんて書き殴ってあって……本当にちょっと怖いです(笑)。

■ノートに手書きすること自体に、何かこだわりがあるのでしょうか?

重岡 昔からメモ帳を持ち歩いて歌詞を書いたりしていたのですが、僕は鉛筆がめちゃくちゃ好きなんです。自分で、ナイフで削るんですけれど、木の香りがして良いんですよね。鉛筆で手書きをしていると、五感というか全身で作品に向き合っている感じがするんです。文字の大きさも自由だし、漢字が間違っていてもいい。手書きは、自分の中のまだ言葉になっていないモヤモヤとしたものを、ゼロから1にするための本当に心強い手段だと思っています。今回の経験で、手書きという行為の解像度がより高くなった気がします。次の作品でも「こういう書き方をしてみよう」「この色のノートならもっと書きたくなるかも」と、もう新しいアイデアが膨らんでいます。

「道草」こそが輝く。帰る場所があるからこそ思い切り戦える



■映画が完成し、作品をご覧になった時の感想を教えてください。

重岡 自分が関わっていないシーンの繋がりや、重なる音楽の演出も含めて、本当に1人の観客として純粋に楽しむことができました。監督を始め、色々な人の熱量を感じられて、このオリジナル企画に自分を招き入れてもらえたことが何より嬉しかったですね。プチョン国際映画祭に正式招待されたことも最高に嬉しいですが、それもやっぱり「誰かと一緒に喜べるから楽しい」のだと思います。

■WEST.が10周年のドームツアーを終えた時にも、同じような思いを感じられたそうですね。

重岡 本当にそうなんです。確かにドームに立つことは大きな目的でしたが、いざ立ってみて感じたのは、欲しかった一番大切なものはその目的よりもっと手前、今までメンバーと一緒に過ごしてきた「道草の時間」の方だったんだなということで。僕の好きな漫画『HUNTER×HUNTER』で冨樫先生がそういうメッセージを書かれていたんですけど、本当に「これ、分かるわ!」と身をもって実感しました。

■お芝居と、ご自身の本業であるステージとの関係性についてはどう考えていますか?

重岡 お芝居をすることは本当に楽しいですし、自分の精神安定剤にもなっています。僕のベースはステージですが、ステージだけだと息が詰まってしまうこともある。そういう時に、お芝居という別の自分として立てる場所があることで救われるんです。逆にお芝居だけで心が詰まりそうな時は、「僕には帰る場所(ステージ)がある」と思える。都合の良いやつなんですけどね(笑)。でも、帰る場所があるからこそ、お芝居の現場で「いてまえ!」「えいっ!」って、思い切りアクセルを踏み込んで全力で戦えるんだと思います。

■最後に、長く続けてこられたからこそ感じる自身の俳優としての「成長」について教えてください。

重岡 長く続けていると、現場で「昔のあの作品を見ていました」と言っていただける機会が増えて、本当に心が癒されます。長く仕事を続けるのは大変なことも多いですが、そういう瞬間に立ち会えると「もうちょっと頑張ってみよう」と思えるんです。その「頑張ってみよう」と思える気持ちこそが、また自分を次の成長へ連れて行ってくれるのだと信じています。




ーPROFILEー

重岡大毅(WEST.)
1992年8月26日生まれ、兵庫県出身
WEST.のメンバーの1人。2014年、日本テレビ系ドラマ『SHARK〜2nd Season〜』で連ドラ初主演。その後2020年には『24時間テレビ43』のメインパーソナリティーに就任し、スペシャルドラマの主演も担当。2021年にはTBS系ドラマ『#家族募集します』にて、ゴールデン・プライム帯の連続ドラマ初主演を務める。映画作品では、『溺れるナイフ』(2016年)、禁じられた遊び(2023年)、『35年目のラブレター』(2025)『ラブ≠コメディ』(2026年)などがある。

[ブログ]https://web.familyclub.jp/s/jwb/diary/F2041?ima=3808


Text:磯部正和


ーINFORMATIONー
【映画『5秒で完全犯罪を生成する方法』】
公開日:2026年9月11日(水)
出演:重岡大毅、原 菜乃華、田中みな実、伊藤 歩、黒田大輔、森岡 龍、九十九黄助、石丸幹二
原案・脚本・プロデュース:岡田道尚
監督:近藤亮太(『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』)
音楽:Teje

<ストーリー>
「この事件を迷宮入りにする」―― 
兄妹は生成AIに全てを託した。禁断の“完全犯罪サスペンス”誕生!
フリーライターの初海航(はつうみ・わたる)は、意図せず殺人を犯した妹・幸来(さら)を守るため、生成AIを駆使して事件を隠蔽しようと思いつく。AIの指示に従って、指紋を拭き去り、死体に死化粧を施し、更にアリバイを工作。無事警察の事情聴取をクリアしたかに思われた二人だったが、事件は世間を騒がせる連続殺人と同じ手口だと知らされる。思いもよらない展開を見せ始めた事態の真相を探るうち、航はトップ女優の七希(なつき)にたどり着く。果たして兄妹の完全犯罪の行方は――?

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