【板垣李光人インタビュー】板垣李光人が怖いものとは?「ホラーは得意か不得意か、というのも特になく普通です」<映画「口に関するアンケート」>
2026.7.7

手のひらサイズの装丁、たった60ページの短い物語で話題になった背筋さんの同名小説が原作の『口に関するアンケート』。
心霊スポットとして知られる墓地の「呪いの木」に肝試しに行った4人の大学生たち。しかし、そのうちのひとりの女子大生が姿を消してしまい、残されたのは3人と、彼らとは別に墓地を訪れた大学生2人の証言のみ。独白スタイルで描かれる証言シーンもまた印象的な作品。
今回は主演を務める板垣李光人さんに撮影のこと、ご自身が怖いと思うものについて語っていただきました。
原作は衝撃的な出会いだった
■脚本や原作を読まれた時の印象を教えてください。
板垣李光人 お話をいただいて初めて原作を読みました。原作自体は30分ぐらいで読み終わったんですが、文字というメディアであることを最大限活かしたホラーだと思ったのと、衝撃的な出会いだったというか、そのサイズとビジュアルを含めて、こんな面白い本があるんだ、と思いました。
そこからこの薄さの本をどうやって映画の尺にするのか?という部分と、文字で読むおもしろさを映画で観たときにどういうふうに生かすことができるんだろう?と思ったんです。
そのあとで脚本をいただいて読みましたが、今回、原作にはない映画オリジナルの要素というものが登場してくるんです。
世に出ている『口に関するアンケート』に、元々背筋さんの頭の中にあったものを混ぜて膨らませた脚本なので、そこは原作ファンの方に安心していただきたいポイントでもあります。映画として背筋さんの原案も含めてとてもおもしろくなっているな、と思いました。
■原作と脚本を読まれたときでは、またちょっと新鮮なおもしろさを感じる部分があったというところですか。
板垣 そうですね。原作は文字としてのおもしろさで、脚本は映画になると考えたときのおもしろさというか。これから作っていく上で、映像になったときのおもしろさとして伝わったらいいな、と思いました。
ホラーは「得意か不得意か、というのも特になく普通です」

■今回のこの作品において怖い部分はどこになりますか。
板垣 正直、内容を知っている状態で観ましたが、堀田と川瀬のシーンはどういうふうに仕上がっているのか知らなかったので、ちょっとモキュメンタリー調に描かれて撮っているところは怖かったなと思いましたね。すごく怖いっていうよりかは不穏な感じが、じわじわとずっと続く感じが。モキュメンタリー調のあの質感っていうのも、映画と見ている観客の境界が曖昧になる感じもするので、そういった部分も含めて怖かったなと思いますし。あとはやっぱり音ですかね、音がいい不快感がありました。
■実際に撮影していて、怖いな、不気味だなと思った瞬間ありますか?
板垣 あまりなかったです。お借りした墓地も手入れのされている墓地でした。全く手入れされていない墓地だったら怖かったかもしれませんが、普通にお墓参りに行くのと、気持ちとしては変わらず撮影していました。
■これまで観たホラー系の作品の中で心に残ったものはありますか。
板垣 アリ・アスター監督の作品は全部好きですけど、一番怖かったのでいうと『呪詛』です。
■ちなみにホラーなど、怖いものはお得意ですか?
板垣 映画でいうと、内容がおもしろかったら邦画洋画問わず、いわゆるホラーというジャンルのものも観たりしますし…得意か不得意か、というのも特になく普通です(笑)。
板垣李光人が怖いもの

■ホラー映画も特に怖くないということでしたが、板垣さんが怖いと思うものは?
板垣 最も怖いもので言ったら、やっぱり人間ですけど……日常で怖いものと言ったら、これからやってきますけど、夏になると普通に道にゴキブリがいるじゃないですか。歩いているときに前に黒い影が見えて、これは落ち葉なのか、ゴキブリなのかっていう、その時間が一番怖いです。それが本当に嫌で。
■ホラーよりも……。
板垣 そっちのほうが何倍も怖いです。
■ちなみに人間が怖いというのは?
板垣 この話をすると、全く違う方向に飛んでいきそうですけど、この作品にも通じるのではないかと思います。強欲さとか、人間が歴史の中で進化する中で得てしまったもの。それが今もどんどん際限なく膨れていって……一体いつこれは終わるのだろうみたいな。人間の進む方向の見えなさみたいなところなんですけど、人間は得体が知れないので一番怖いです。
ベースにあるのは人間のどうしようもなさ

■今回演じられた翔太は、板垣さんからご覧になってどんな人物だと捉えられましたか?
板垣 背筋さんの作品は、人間のどうしようもなさというのがベースにあって、今回も呪いという概念的なものが出てきますが、結局は人間同士が生み出していったものが結果としてそういう形になった、という描かれ方でまさしく翔太もそういう人間のどうしようもない部分というか。やったらダメだと言われたことをやりたくなる、触ったらダメだと言われたものを触りたくなる。その人間の本能的な部分を我々は理性を持って抑えていきますが、翔太の場合は、その理性が外れて溢れてしまったっていう、そういう人間のどうしようもなさが描かれていると思うので、背筋さんの作品らしいなと。そこを象徴しているキャラクターだなとも思います。
■演じる上で意識されたことや、監督からはどんなディレクションがありましたか。
板垣 今回の作品は証言のシーンが本編の半分ぐらいを占めています。証言のシーンも、普通の状態であの通りのままの感情の芝居をしていくのではなくて、自分が持っている心と感情、何かまた別の特異なものに動かされているような状態も作らないといけないのがとても難しかったです。
でも、事前に監督から証言の部分や表現において、参考になりそうな映画を教えていただいて観ていたんです。全く自分の中でビジュアルのイメージがないまま準備するのもなかなか難しいので、ある程度参考になるようなものを観ながら、こういう感じかなという想像を膨らませて臨みました。
■参考作品をご覧になったのはやっぱり大きかったですか?
板垣 事前に観たことで監督がイメージしていることが少し分かるだけでも違いました。
それでも、今回の撮影は大変でした。証言のシーンを撮ったのが初日だったので。
■勝手に後半に撮ったのかと思っていました。
板垣 もちろん、最初から最後まで一気に撮ったわけではなく、ある程度、ブロックに分けて撮っていきましたが、後半になってくるとだんだん全貌が見えてきて。いろいろ仕掛けも増えてくる中で、どうしてもNGが出てきます。後半になるにつれ、自分の感情が上がってきているところで何回か証言のシーンを撮るとなると立て直す大変さもありましたけど、やはり初日にあのシーンを撮影するのは大変でした。
■本作の撮影で得たものというのはどういったことでしょう?
板垣 今回は杏が恐怖の対象で、もちろん、お客さんもそれを見て恐怖を感じるけど、劇中で我々がどう受けてどう見せるかでお客さんの温度も変わってくると思います。
目を見開いて恐怖を感じているところとか、それも俯瞰になるとどうしてもあまり目を開いている感じに見せられないので、バレないようカメラワークに合わせて顔を上げていって、目を見開いている状態をなるべく長く見せたり。芝居という感情的な部分に加えて、きちんと視覚的にわかる表現をしないといけないのはなかなかないやり方で、そこを自分で考えるのもおもしろかったです。
■そういう見せ方のディレクター的なことも行うんですね。
板垣 ディレクターに徹せるなら楽しいと思いますけど、マルチタスクが苦手なので、いろいろできないんです。役をやりながらディレクターも、みたいなことは多分無理だと思うので、そこに集中できるのであれば、多分楽しめるかなとは思います。
■それを踏まえて完成した作品を観られていかがでしたか?
板垣 夏のほの暗さの色合いと画面の温度みたいなところは「あ、これだな」と思いましたね。それぞれ監督によって違いますし、今まで出てきている作品のテイストとも変わっていく中で、自分が今まで清水監督の作品の中で見たことのある、あの温度の世界に入った感じがしたのは、嬉しかったです。
監督がとにかくおちゃめで明るい

■本作では座長ということで、意識されたことはありますか。
板垣 基本的にどうあるかというのは、本当に人それぞれだと思います。さまざまに主演の方の姿がありますけど、役者として現場にいる中で芝居でも最高のパフォーマンスを出さないといけない、でも自分自身の居心地も大事にしないといけない。
それを考えた時に、自分が前に出て先頭に立って引っ張っていくより、フラットにいることを心掛けています。前後なく全員が横一列でいられたらいいなって。特に今回はキャストも年代が近かったので、そこに関して巻き込みやすい部分もあり、心強かったです。
■キャスト同士年齢が近いということで、刺激になったことはありましたか。
板垣 MOMONAさんが、本当に現場でもたくさん悩んで、すごく真剣に向き合っていて。声の芝居はやられていましたが、自分の体を使って芝居をされるのが初めてだったそうで、体当たりで芝居をしに行く姿が見ていて刺激的でしたね。貪欲に監督からのリクエストに応えようとしている姿とか。
こうやってたくさん作品をやらせていただいていると、やっぱり芝居をするということにどうしても慣れてしまう部分ってあると思うんです。その中で彼女の姿を見た時、いい刺激をもらえたなと思います。
■MOMONAさんに板垣さんの方から声をかけたりはされたんですか?
板垣 こうした方がいいみたいなことは基本ないんですよね。芝居の仕方というものは本当に人それぞれで、とにかく場数を踏んで正解を見つけていくしかないので。見つけてくれたらいいな、という思いで、「こういうやり方もあるかもね」みたいな感じの言い方はしたりもしましたけど(笑)。でも、それでなにか変なことを言って、彼女のリズムが崩れても嫌だし、それぐらいに留めておきました。
■そんな同世代が多い現場の雰囲気はいかがでしたか?
板垣 現場は監督がとにかくおちゃめで明るくて、ずっとボケを挟んでくる感じなので。深い時間までの撮影もありましたが、監督はもうずっと変わらないので、そのムードを作ってくださるさまに助けていただきました。
■作風からは全然想像がつかないですね。
板垣 僕もお会いするまではどんな方なんだろうと思っていて。勝手に怖いイメージがあるじゃないですか、やっぱりあの作品の数々なので。でも、すごく優しい方で安心しました。
考察をする余白がある作品

■皆さんにお聞きしているのですが、サイト名にちなんで最近心を揺り動かされた瞬間(エモかったエピソード)を教えてください。
板垣 最近、現場で動物型のお菓子を久しぶりに食べて。すごく懐かしい気持ちになりました。全然食べてなかったんですけど、おいしいな、と思って。
■ちなみに好きなキャラクターいますか?
板垣 なんでもいいかも(笑)。味一緒ですし(笑)。
■キャラクター好きな方もいらっしゃって、グッズが出たり。
板垣 ちょっと勉強不足でしたね、あのこんがりとしたキャラクターしか存じ上げなくて(笑)。
■ホラーは苦手だけど本作が気になっている方がたくさんいらっしゃるかと思います。
最後に、そんなホラーが苦手だという方に本作を観ていただくとしたら、どのようにオススメされますか。
板垣 怖い描写もありますけど、ホラーかと言われると、そんな気もしていなくて。背筋さんの作品って、ベースに人間のどうしようもなさがあるからこそ、呪いっていう概念が出てきたとしても、原因は人間だということに帰するんです。そこで生まれるのは人間同士のサスペンス的な要素だったり、ミステリー的な要素だったり。お客さんも一緒にレコーダーを聞くように、この5人の証言を聞いて、その謎に追っていくような楽しみ方をしてもらえるかなと思います。あと、初号を劇場で観て思ったのは、音が本当にいい不快感があるからこそ、密閉された映画館という空間で聴いて浴びてもらいたいな、と思うんです。
苦手な方は尻込みしてしまうかもしれないですけど、事前に原作を読んでいただいてから映画を観ていただいたらきっと怖さもありながら、考察をする余白もあると思います。ホラーな部分だけではないので、ぜひそういった点でもご覧いただけたら嬉しいです。
■たくさんのお話、ありがとうございました!

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板垣李光人
2002年生まれ。2012年に俳優デビューし、映画『八犬伝』『はたらく細胞』『陰陽師0』で第48回日本アカデミー賞 新人俳優賞を受賞。今年は、ゴールデン帯連続ドラマで初主演を務めたカンテレ・フジテレビ系ドラマ『秘密~THE TOP SECRET~』(25年)、映画『ババンババンバンバンパイア』(25年)、ドラマ「しあわせな結婚」(25年)、NHK連続テレビ小説「ばけばけ」(25年)、映画『ペリリュー-楽園のゲルニカ-』(25年)など話題作への出演が続いている。さらに、7⽉23日スタートのドラマ『⼤空港〜GATE24〜』(毎週⽊曜・夜9時〜 テレビ朝⽇系)に出演予定。
[X] @itagaki_rihito
[Instagram] @itagakirihito_official
Photo:Tamami Yanase、Text:ふくだりょうこ
―INFORMATION―
【映画『口に関するアンケート』】
公開日:2026年7月3日(金) 全国公開
出演:板垣李光人/綱啓永、吉川愛 MOMONA(ME:I)、森愁斗(BUDDiiS)、西山智樹(TAGRIGHT)、柄本時生/中村獅童
原作:背筋『口に関するアンケート』(ポプラ社刊)
監督:清水崇 脚本:山浦雅大 音楽:大間々昂
インスパイアソング:オレンジスパイニクラブ「口」(WARNER MUSIC JAPAN)
プロデューサー:田口生己 佐藤孝樹 白石裕菜 石田基紀
製作:映画「口に関するアンケート」製作委員会
制作プロダクション:ホリプロ
配給:松竹
<ストーリー>
「あの夜、何があったかお話ししますね」
心霊スポットとして有名な墓地の呪われた木についての噂を聞き、肝試しに出かけたある大学生たち。しかし、翌日グループの一人が行方不明になってしまった。その日を境に、彼らの身の回りに不可解なことが起きるようになり、次第に何かによって追い詰められていく…。果たしてあの日、何が起きたのか?あの日にまつわる証言に導かれて明らかになる、<おそろしい結末>とは――。
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©2026映画「口に関するアンケート」製作委員会























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