ゲイだからって特別な身構えはなかった。一人の人として純と向き合っただけ。―神尾楓珠インタビュー<映画『彼女が好きなものは』>



圧倒的なビジュアルに、ラブコメから社会派まで見事に演じぬく演技派な一面も兼ね備えた、今最も目の離せない若手実力派イケメン俳優【神尾楓珠】にインタビュー。

2021年12月3日(金)より全国公開中の映画『彼女が好きなものは』では、ゲイである自らのセクシュアリティを自覚する一方で、“異性と結婚し、子供をもうけて、家庭を築く”という長くスタンダードとされてきた幸せの形を諦めきれず、葛藤する主人公・純という難しい役柄を見事に演じている。

今回Emo!miuでは、共通点があるという主人公・安藤純を演じる上で意識したポイント、観る者の胸に迫る病院でのシーンについて、山田杏奈・前田旺志郎ら共演者との撮影秘話、また、学生時代抱いていたコンプレックスや、自分らしさを出せる瞬間やプライベートで幸せを感じる瞬間など、パーソナルな部分までたっぷり伺いました。



自分でもちょっと近いなって思う部分があるんですよね。



■まずは、台本を読んでいかがでしたか?

神尾楓珠  難しそうだなって思いましたね。繊細なテーマを描く作品なので、ちゃんと向き合わなきゃいけないと。

■オファーを頂いた時にプレッシャーなどありましたか?

神尾 もちろんありました。ドラマ版もあるじゃないですか。だからきっと比較されちゃうんだろうなって。

■ドラマ版は観られましたか?

神尾 いや、観てないです。意識しちゃいそうなのであえて見なかったんですよ。

■じゃあ、脚本を自分なりに落とし込んで演じられたんですね。

神尾 そうですね。



■脚本を読んだ時に、特にどんなところが難しそうだと思いましたか?

神尾 後半、周囲にゲイだと知られてからがお話として凄く重くなっていくんですよ。前半は自分の中だけでの感情の起伏だったんですけど、周囲の意識が入ってくるとやっぱり難しそうだなと思っていましたね。

■オフィシャルで「自身が演じることになる安藤純というキャラクターを深く理解し、決して軽く捉えてはいけないということを肝に銘じながら、この役を演じました。」とコメントされていますが、純というキャラクターとどんな風に向き合って落とし込まれたんですか?

神尾 監督やプロデューサーさんから似ている部分があると言われていて、自分でもちょっと近いなって思う部分があるんですよね。特に学生時代の周囲との関係性とか思い返すと僕も高校生の時あんな感じだったなって。自分の考えはあるけど、それを出さないで周りに合わせて円滑に進めようとしているみたいな。そういう共通点から細かい役作りをしていきました。

■難しい役ではあるけど、似ているというということは純という役に入りやすかった?

神尾 そうですね。入りやすくはありました。

ゲイだからって特別な身構えはなかった。一人の人として純と向き合っただけ。



■LGBTQ、セクシュアルマイノリティは社会的に関心の高い題材だと思います。この作品に入る前、受ける前の神尾さんはこういったテーマに関する関心や距離感はどのような形だったのでしょうか?

神尾 そのような人に対する自分の意見を特に持ってなかったというか。どっちでも良いじゃんって感覚でした。

■後半、純がゲイだと知られてから、教室でクラスメイトが話し合う場面があるじゃないですか。あそこの立ち位置に近い感じ?

神尾 そうですね。でも、仮に自分があの場にいたとしても絶対に自分の意見は言わないです。

■ある意味語ることがないというか。否定もないし肯定もないしみたいな。

神尾 そうですね。

■それってある意味凄く当事者から遠い訳じゃないですが、それを当事者として演じるっていう、ものすごく距離のあるものに対するアプローチはどのように試みた感じですか?

神尾 僕が以前出させていただいた作品の中に、他の人がゲイの役を演じられていたんですね。その時のその人の演じ方とか言っていたことを振り返りながら、参考にもしましたね。




■ゲイ当事者の方へのヒアリングはせずに自分の中で試みとして作っていくっていった感じなんですね。

神尾 そうですね。ゲイだからといっても皆同じではないので、周りから固めていくというよりも、台本の中の純とだけ向き合っていった感じですね。

■そこはある種、純がゲイであろうとなかろうとある種他の役の役作りと変わらなかったという感じですか?

神尾 はい。ゲイだからって特別な身構えはなかったですね。一人の人として純と向き合ってただけで。

■先ほどご自身にも近いとおっしゃっていましたが、純っていう男の子を神尾さんの言葉で表現するとどんな男の子と思いながら役を作っていきましたか?

神尾 大人びている印象でしたけど、プロデューサーさんには世捨て人感が似ているって言われて。でもそれを言われた時、確かになって思いました。純って人や社会に対して諦めている感じがあるじゃないですか。そういうところはちょっとに似ているのかなって。

■その大人びている、どこか諦めている部分がある純ですが、改めてなぜそういう風に世間と向き合っているのだと思いましたか?

神尾 それこそ本当に、「世界を簡単にする」って言葉じゃないですけど、この社会の中で円滑に生活していくための手段だったんじゃないかなって思います。

■「摩擦をゼロに」そうしないと社会と上手いことハマれないというか。

神尾 はい。あの言葉凄いですよね。そんな表現の仕方があるんだって思いましたね。

(誠さんとの)ありもしない思い出がいっぱい思い出されて(笑)。



■純は、学校のシーンと今井翼さん演じる誠さんとのシーンとで二面性がある印象だったんですけど、それぞれ撮影や共演者の皆様とのエピソードや、印象的だったことなどをお聞きしたいです。

神尾 学校のシーンと誠さんのシーンとでちゃんと明確に違いが出るといいなって思いながらやっていたんですけど、学校のシーンは普通に楽しかったです。みんなと仲良くなりましたし、(前田)旺志郎が場を盛り上げてくれたり(笑)、楽しい撮影現場でしたね。

■山田杏奈さんとのシーンも多かったと思います。だんだん距離が縮まって関係性ができあがっていく感じでしたけど、演技の掛け合いの方も段々出来上がっていく感じだったんですか?

神尾 杏奈ちゃんは三回目の共演なので、お互いに結構知っていたので、徐々に関係性ができてきたというよりは、最初からやりやすかったです。

■同級生同士の関係性って言うのは前田さんとかも含めて作りやすかった?

神尾 つくりやすかったです。

■今井さんとのシーンはいかがですか?

神尾 今井さんは、初日に凄く緊張されていて、今井さんでも緊張されるんだなって思っていました。僕は何日か経っているからそんなことなかったんですけど。

一同 (笑)。



■それは何かほぐしてあげようとかされたんですか?

神尾 いやいや(笑)。僕は、初日だったっていうのもあってあまりそれで変に声かけるのも違うかなと思ったので、緊張がこっちに伝わっていない顔でいたんですけど、最終的に今井さんが「はあ緊張する」って言ったから(笑)。

一同 (笑)

■神尾さんはその言葉に何か返されたんですか?

神尾 「いやー初日ですもんね」って。

■(笑)。

神尾 それがきっかけで結構話すようになりました。
最後の別れのシーンで、手を骨折している純に誠さんがラムネの蓋を開けて渡してくれるシーンがあるんですけど、本番開けたらしゅわって溢れ出てきたんですよ。それを・・・あれなんて言ってたっけ。今思い出せないんですけど、普通にポロッとでた言葉が凄くリアルだったんですよ。それを見た時になんだか泣きそうになりました。なんでかわからないんですけど。

■それは役としてリアルな言葉?

神尾 どっちかわからないですけど、お別れなんだなって思って。泣きそうになりましたね。

■誠さんがつぶやく「こぼれちゃった」ってところ?

神尾 そうですそうです。

■そこでグッときて?

神尾 脚本にはない二人の思い出がいっぱい思い出されて。

紗枝とは目線が対等だから出せる素もあって、誠さんは、自分が下だから甘えたりできる



■お別れなんだなって実感が沸いたってことですね。
先ほど学校と今井さんのシーンでちょっと違うように演じているとおっしゃっていましたが、演じる上で意識的に変えられた部分はありましたか?


神尾 あります。学校や家では表向き用の純を作っていて、どちらかというと誠さんといる時が素の純で、雰囲気もやわらかいです。人間味があるというか。

■誠さんの前が一番自分らしくいられる?

神尾 そうですね。そういう風に意識的に区別していましたね。

■そういうのってその現場に入ったり、今井さんだったり山田さんと対峙すると切り替わるものなんですか?

神尾 そうです。そこまで意識的に切り替えようってわけではなく自然とですね。



■ほかの共演者の方とのお話も出ましたが、亮平もかなりキーになる役柄だなと思っていて、紗枝に見せる顔、誠さんに見せる顔、亮平に見せる顔と、全部違うじゃないですか。それぞれでこういう風にしようって意識したことはありますか?

神尾 紗枝の前では、あまり深入りされたくないからちょっとつんつんしているというかそっけない感じでやっていて。後半になるにつれて少しずつ関係性も変わってはいくんですけどね。

亮平に対しては、昔から仲はいいんだけど、でも自分の一番コアな部分は言っていなくて。でもそれを悟られたくもないから何も秘密がないように振舞っていましたね。

で、誠さんの時は素を出せる存在といった感じです。

■でも紗枝と時間を一緒に過ごすことによってそっけなくしていたのが、みんなには出せない素の部分を紗枝には出せるようになっていったじゃないですか。誠さんにも出せない部分を紗枝には出せるようになっていましたよね。

神尾 そうですね。後半の紗枝といる時も素ではあるんですけど。誠さんといる時の素とは違くて。なんて言えばいいんだろうな。紗枝との時は目線が対等だから出せる素もあって、誠さんの時は、自分が年下だから甘えたりできるっていう違いがありますね。

(旺志郎は)ガンガン喋りかけてきますからね(笑)。



■先ほど亮平の話も出ていたんですけど、亮平と親友役を演じる上で、現場で沢山コミュニケーションを取ろうとしたなどあったんですか?

神尾 コミュニケーションを取ろうとしなくてもガンガン喋りかけてきますからね(笑)。

■そうなんですね(笑)。前田さんとは初共演?

神尾 初めましてです。後に聞いたら、話しかけづらかったみたいで。初めて会ったのが、リハの時だったんですけど、最初のシーンがいきなり股間を触られるところのリハからやって、それでもう股間をさわったからいいやってなったみたいで、そこから話しかけづらいとかなくなったみたいです(笑)。

一同 (笑)。

■結果的にそこのシーンからスタートでよかったですね(笑)。

神尾 そうですね(笑)。

■じゃあ前田さんから距離を縮めようと思って寄ってきてくれた感じだったんですね。

神尾 みたいですね。

■現場ではどんな話されたんですか?同年代の子たちが多い現場なので、本当の学校みたいな感じだったのかなと。

神尾 どういう話をしてたかな。でも僕今回はそんなに口数は多くなかったと思います。



■それは役に入っていたから?

神尾 そうですそうです!なかなか役が抜けなくて。だからそんなに明るい乗りではいられなかったです。

■純として現場に居られた感じだったんですね。

神尾 多少、周りに合わせたりはしましたよ(笑)。

■その中で前田さんがガツガツ来てくれたのはよかったですね。役のままの関係性というか。

神尾 あと、旺志郎が池田朱那ちゃんの連絡先をずっと聞こうとしていました(笑)。

一同 (笑)。

神尾 ずっと断られていましたけど(笑)。

一同 (笑)。

■そこまでリアルに作品にリンクするって凄いですね。

神尾 きっと現場の雰囲気をよくするために、意図的にやっていたんだと思います(笑)。

純にとっては人生においてずっと我慢してきてことだから。その分の感情が出てないとおかしい



■個人的にはお母さん役の山口紗弥加さんとの病室のシーンが胸に迫るものがありました。恐らく演技者としても力の入る場所だったんじゃないかなと思います。撮影に臨むにあたってどんな準備をしていったのか。実際に演じてみて、何か心に残っているものがあれば教えてください。

神尾 台本を読んだ段階から、あのシーンが純の感情がピークになる所だと思っていたので、その前までは感情を抑えて芝居をしていて、あのシーンに全ての感情を持っていくくらいの気持ちでずっと撮影をしていました。
山口さんも僕がやりやすいようにやってくださりましたし、本当にやりやすい環境でできました。もっとあのシーンは芝居としてしんどいかなと思っていたんですけど、でもそんなこともなく、役に没頭できたなって思います。

■ぐわっと感情が出ていましたけど、あれは本当にやり取りの中で自然に溢れた感情だったんですね。

神尾 そうですね。

■撮影のタイミングとしては、どれくらいのスケジュールの時にあのシーンがあったって感じですか?

神尾 結構後半です。

■そういう意味では安藤純を演じてきた中で蓄積されてきたものが活きた部分はありましたか?

神尾 そうですね。本当に終盤で良かったなって思います。映画の中では最初のシーンからそこまでのことしか描かれてないですけど、純にとっては人生においてずっと我慢してきてことだから。その分の感情が出てないとおかしいと思うので、だから本当に我慢の時間があってよかったなって思いました。



■先ほどありもしないような記憶が蘇ってきましたとおっしゃっていましたけど、やっぱりそういう瞬間ってあるんですか?何かこう台本にも書かれていない、自分も経験していないものが蘇ってくるみたいなものはこのシーンでもあったんですか?

神尾 このシーンでもありました。山口さんとの親子の思い出みたいなものが。

■神尾さんは理論的に作っていくというより、現場に入った時に感覚でグッと入っていく俳優さんですか?

神尾 どちらかというと理論先行なんですけど、少し変わりました。
20歳の時に萩原利久っていう友達と会った時に、利久は感情のタイプなんですけど、その時の僕は完全に理論型で、単純に疑問に思ったので「なんでそんな感情でいけるの?」って聞いたんですね。そしたら「でも別に考えてないわけじゃないよ。計算をした上での憑依だから」って言われて、なるほどなって。それでやっぱり理論だけじゃダメなんだなって思って、変わりました。今回は、もちろん最初の計算はありましたけど、計算した上で全部忘れて役に入ることができたかなって思いますね。

■カメラが回る前は凄く集中していた感じですか?それともむしろ無でした?

神尾 僕は無にはなれないですね。集中しますね。それで入る直前に忘れるっていう。

慰めのつもりで言っているけど、何が棘になるかわからない



■山口さん演じるお母さんから、昔、私も同性の先輩に憧れたことがあるから気持ちがわかるよみたいなニュアンスの言葉をかけられた純は、そこでぶわって感情が溢れだしますが、当事者じゃない人が悪意なく相手を思って言ったことが、相手を気付けたり、追い詰めたりする言葉になることもあると思うんですけど。その言葉を受けて、芝居をしていて溢れ出た部分ってあったりしましたか?

神尾 この作品をやって、簡単に理解があるとか言っちゃいけないなって思ったんですよ。それと近いものがあの言葉にはあって、慰めのつもりで言っているけど、何が棘になるかわからないなって思いましたね。僕自身、その時はその言葉が嫌味に聞こえて、表面しかみてないじゃんと感じてしまって感情が溢れ出たシーンなんですけど。

■純としてあのセリフにざわっとする気持ちはわかる?

神尾 わかります。もちろん優しさも感じてないわけじゃないんですけど、でもあの状況であの言葉を言われるとやっぱり最初に出てくる感情は怒りだなって思いました。

■神尾楓珠として読んだらもしかしたら引っかからなかったかもしれないですか?

神尾 そうですね。



■そのシーンが終わって監督OKが出た瞬間ってどんな気持ちでしたか?

神尾 OKが出たら普通に戻るじゃないですか。そしたら隣で山口さんが泣いているからすみませんって思いました(笑)。

一同 (笑)。

■切り替え凄いですね(笑)。

神尾 でもそうしないと体力が持たないです。

■結構何度か撮りましたか?

神尾 3、4回くらい撮りました。

■大変。

神尾 でもあのシーンで、モニター越しにスタッフさんが泣いていたっていうのを後に聞いて、すっごく嬉しかったですね。そんな経験なかなかできないじゃないですか。だから思い出のシーンです。

■神尾さんの今までの出演作品の中でもあれだけの感情があふれ出すのってレアですよね。

神尾 ないですね。あの感情の大きさはかなりのレベルですね。

■あのシーンをやり遂げられたことでご自身の中に何か俳優として残ったものはありますか?

神尾 やっぱり、ちゃんと没入すれば伝わるんだなって思いましたし、そこでこのくらいでいいやって思っちゃダメなんだなって思いましたね。

相手に合わせてばかりでは本当の友達にはなれないなって



■先ほど純の人との距離の取り方が自分の高校時代に似ているとおっしゃっていましたけど、神尾さんご自身は人との距離の取り方に関して高校時代と今とを比べると変化はありますか?

神尾 ありますね。友達に対して自分の意見をちゃんと言うようになりました。それで衝突したらしたで、まあそれはしょうがないっていう考え方になりましたね。高校生の時は、波風立たないで終わることが一番いいと思っていたんですけど、大人になればなるほど意見の食い違いももちろん出てくるし、それで仮に相手に合わせてばかりでは本当の友達にはなれないなって思って、基本的に言うようになりましたね。

■それはいつくらいからそういう考え方になったんですか?

神尾 でも21歳くらいですかね。

■それは言うようになったら、ご友人や役者さんやスタッフさん、周囲の方との関係性としてはやりやすくなったり?

神尾 信頼してくれている感じはしますね。ずっと合わされていると向こうも向こうで、え、何も意見を言わないけど大丈夫なのかなって思うじゃないですか。そういうのがなくなったので、周囲の人も信用してくれるようになりました。
流石に仕事では合わせますけどね(笑)。

■もちろん監督の意向とかもありますもんね。

神尾 はい。大人の事情もありますし(笑)。

■(笑)。その中でたとえば、自分としては曲げたくないこともありますよね。

神尾 そういうのがあったらちゃんと言うようにはなりました。



■今回はそういったことはなかったんですか?

神尾 今回は草野監督と役に対する解釈が同じだったので、衝突するとかは特になく。

■監督のコメントでも最初からほぼ完ぺきだったっていうコメントがありましたよね。

神尾 ありがたいですね。

■じゃあ特に役についてすり合わせるとかは特になかったんですね?

神尾 そうですね。なかったですね。

■じゃあ基本的に神尾さんは作られた純のままで。

もちろん本読みの時に監督に言われた言葉も参考にしていますし、現場に入って、修正点があれば監督が指摘してくださるんで。でも基本的には自分が思った純でやっていましたね。

■本読みで監督から頂いた言葉はどんなものがあったんですか?

神尾 周りとの関係性とかの違いとか。学校にいる時と誠さんといいる時の違いとか。そういった部分は監督がおっしゃったことを参考に作っていった感じですね。

純と紗枝は同志。



■作品の中の恋愛とも友情とも言えない純と紗枝との関係って、神尾さんの中でどう映っていましたか?

神尾 僕は最終的に同志だなって思いました。周りにわかってもらえないっていう悩みもあって、隠しているっていう悩みもあって、その一個だけで一緒にいるから。その関係を何かの言葉にするなら同志しかないなって思いますね。
純からしたら何回も助けてくれる紗枝は完全に恩人ですけど、純は別に紗枝を助けているわけでもないじゃないですか。そう思うとなんで紗枝は、好きだからっていうのが理由かもしれないですけど、対等じゃないなって思ってしまいます。本当に不思議な関係だなって。

■確かに。純からしたらギブアンドギブですよね。

神尾 だからなんで一緒にいるんだろうなって。純的には最初、自分が女の子を好きになれるかの実験的な面もあったんですけど、紗枝の優しさとか見返りを求めないところとかに惹かれていったんだろうなって。純にとって紗枝は人生においてターニングポイントをくれた人だと思いますね。

■男女の性別とか。そういうことじゃない。人と人とが結ぶつく時に一番大切なものなど、あの二人から感じ取ったものはありますか?

神尾 性別関係なく分かり合えることがあるということです。それは多分この二人は口先だけの理解だけじゃなくて、ちゃんとお互いを理解し合えたからだと思うんですよね。偽善の理解じゃなくて、本当に理解し合って、自分のことも理解しようって思って。その根本の考え方が一緒だったから分かり合えたんじゃないかなって思いますね。

純になれている感覚があったからこそ、不安。



■作品をご覧になられて改めてどう思われたのかをお聞きしたいです。

神尾 僕はもう客観的には観れなかったです。不安です。撮影中は、純になれている感覚、よくできている感覚があったんですよ。でもその感覚があった分、完成した映像を観た時に、自分のちょっとした粗とかが目立って見えちゃって。だから不安なんですよね。

■他の作品でもそういうことは思われるんですか?

神尾 他の作品でここまで思うことはないですね。より没頭していたからその分そういうところが気になっちゃって。
めちゃくちゃ不安なんですよ。観た後、うわぁ僕が映画をが台無しにしてしまったかもって。

■そんなこと誰も思ってないですよ。本当に神尾さんの演技すばらしかったですよ!めちゃくちゃ謙虚すぎます(笑)。

本当はもっと愛されたいんですけど(笑)。



■紗枝は、自分の趣味に誇りは持っているけど、少しコンプレックスでもあってBL好きなことを隠して生活していますが、神尾さんご自身が過去にコンプレックスを抱いていた時期はありますか?

神尾 全然あります。

僕結構暗いんですよ。家で家族といる時も学校での出来事を喋らないタイプだったんですよ。一方で僕のお兄ちゃんが結構喋るタイプで、好きな人できたんだとかすぐにいうタイプだったんですよ。それに家の手伝いとかもしないタイプでよく怒られていたんですけど、結局好かれるのはそっちなんですよね(笑)。手が掛かる方が好かれるっていうのがあって、それがコンプレックスでしたね。

■本当はもっと家で素直に話したかったけど?

神尾 そうですね。本当はもっと愛されたいんですけど(笑)。

■お兄さんのように振る舞えば、親にも気にかけてもらえるってわかってはいるんですもんね。

神尾 そうです。でもできないっていう。

■それは何か理由が?

神尾 なんでですかね。いい子でいたかったんですよね。あと、その時は気づいてなくて、いい子でいれば愛されるって思っていたんですよ。今振り返るとそっちじゃなかったんだなって(笑)。

■今は素を出せているんですもんね。

神尾 はい。今はもう普通に喋れているんですけどね。

■じゃあ気づいたのも比較的最近なんですか?

神尾 確か高校卒業してからですね。

■お手伝いしてって言われる前にするタイプだったんですか?

神尾 そうですね。言われる前にもしますし。お兄ちゃんがやってなかったのもやっていました。

■ちなみにそんな高校時代、学校ではどんな学生でしたか?

神尾 普通に男友達でふざけたり、色んなところに遊びに行ったりしていましたね。高校ではクラスの中では結構うるさいタイプなんですよ。家とはまた違って、学校ではうるさいタイプでしたね。

■高校での自分が素だったんですか?

神尾 そうです。そっちは多分友達の前だから素になれたんですけど。

■学校では活発で、家では静かな子だったんですね。ギャップがすごいですね。きっと学校での活発な姿を見たら親もびっくりしますね。

神尾 そうなんですよ。担任の先生が親と話す時に、凄く活発でって言うと、親がびっくりするんですよ(笑)。

「一緒に手伝うよ」って言ってくれる友達が2、3人いたから凄く幸せだなって



■純は、自らのセクシュアリティを自覚する一方で、異性と結婚し、子供をもうけて、家庭を築きたいという願望があったと思うんですけど、神尾さんの今思い描いている幸せってどういう感じかっていうのをお聞きしたいです。

神尾 僕は、友達がいることが幸せだなって思いますね。この間部屋の雰囲気を変えようと思って、ベッドなど家具を結構買ったんですね。それで「ベッド買ったんだよね」って友達に言ったら、「一緒に手伝うよ」って言ってくれる友達が2、3人いたから凄く幸せだなって思いました。

■そういうコミュニケーションを取れる存在がいてくれるってことが力ですよね。

神尾 そうですね。やっぱりこの仕事をしていて相談というか喋れる人がいないとやばいですよね。

一同 (笑)。

神尾 いや心が死にますよ(笑)。

■じゃあ結構友人とお話したりして発散して。

神尾 そうですね。素になれる場所があるっていうのがいいですよね。

友達といる時が一番素でいられる。



■じゃあ神尾さんが何かに悩んだ時にすることと言うのは友達に話すこと?

神尾 友達に話します。
結構悩むと色んなことで頭の中がぐっちゃぐちゃになって結局なんだっけってなるから、友達に話しながらそれを整理するみたいな感じです。

■オフィシャルのコメントで「この作品を観て、「自分らしさ」とは何か、「自分らしく生きること」とは何か。そういったことを考えるきっかけになってくれれば、嬉しく思います。」と話されていますが、“自分らしさ”が今作の大きなポイントでもあると思います。神尾さんが自分らしさを出せるのはどんな時どんな場所ですか?

神尾 友達のところしかないかもしれないですね。家族でいる時も多少気を遣うし、完全な素ではないんですよね。素は素なんですけど、自分の気持ちいい素ではないというか。でも友達といる時はそういうことを何も考えずにいれます。だから友達といる時が一番素でいられます。

2021年一番心揺さぶられた瞬間



■じゃあ一人で黙々と何かをやって発散させるというよりかは、基本的には友達と会って発散させる感じなんですね。

神尾 そうですね。

■純は悩んで考えこんじゃうタイプですが、神尾さんは?

神尾 考えこみます。でも答えはでないですね。答えが出たためしがない。

一同 (笑)。

■それでも考えちゃう?

神尾 考えて、最終的にどうでもいいやってなります(笑)。

一同 (笑)。

■最後に今作は、観る人の心揺さぶる作品ですが、神尾さんが今年一番心揺さぶられた瞬間をいつどんな時でしたか?

神尾 オリンピックに揺さぶられました。中でも僕が一番揺さぶられたのは、体操団体の最後の橋本大輝選手の鉄棒です。素晴らしかったです。

■ありがとうございました!

★後日、神尾楓珠さんからのメッセージムービーを公開!お楽しみ★



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\神尾楓珠 インタビュー記念/


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ーPROFILEー
神尾楓珠
1999年1月21日生まれ。東京都出身。
2015年、24時間テレビドラマスペシャル「母さん、俺は大丈夫」で俳優デビュー。2019年にはTVドラマ「左ききのエレン」で連続テレビドラマ初主演。主な出演作は、ドラマ「3年A組 ―今から皆さんは、人質です―」、映画『HiGH&LOW THE WORST』(19)、『転がるビー玉』(20)、『私がモテてどうすんだ』(20)、『ビューティフルドリーマー』(20)、『樹海村』(21)。現在放送中のドラマ「顔だけ先生」では主演を務めているほか、公開待機作には『20歳のソウル』(22年公開)がある。

―INFORMATION―
映画『彼女が好きなものは』
公開日:2021年12月3日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
出演:神尾 楓珠、山田 杏奈、前田 旺志郎、三浦 獠太、池田 朱那、渡辺 大知、三浦 透子、磯村 勇斗、山口 紗弥加、今井 翼
監督・脚本:草野 翔吾
原作:浅原ナオト「彼女が好きなものはホモであって僕ではない」(角川文庫刊)

©2021「彼女が好きなものは」製作委員会

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