連載【高杉の「フッ軽」になりたくて…】失敗も味に。吹きガラスで花瓶作りに挑戦<第2回>!
2021.8.4
俳優・高杉真宙が“フッ軽になりたい…”をテーマに、今まで興味はあったけれどフッ重ゆえに挑戦できなかったモノやコトなどに挑戦していく連載企画【高杉の「フッ軽」になりたくて…】。第2回目は、<初の吹きガラス>に挑戦。
吹きガラスは、溶解炉で熔かしたガラスを吹き竿と呼ばれる金属管の端に巻き取って、空気を吹き入れながらクルクルと回転させて成形する技法で、古代ローマの時代からほとんど製法の変わっていないガラス工芸の手法のひとつ。
そんな歴史の長い吹きガラスを用いて、なかむら硝子工房さんご協力のもと、世界に一つだけの「花瓶」を作ります。高温でやわらかくなったガラスは、少し傾けただけで歪んでしまうので成形が大変。だからこそ一つの作品が完成した時の感動もひとしおです。そんな一筋縄ではいかなそうな高杉さん初の吹きガラス体験で、どんな作品が生まれるのでしょうか・・・!
記事の最後には、フィルムカメラで撮影した今月のベストショットも。お楽しみに♪
撮影時に頂く花を飾りたい。
まずは作りたいイメージを絵にしていきます。「絵下手なんですよね」と少し不安げな高杉さんでしたが、工房にある作品やスマホで検索しながら、自分の作りたいイメージを一生懸命に描き進めていきます。
「映画やドラマなど作品のクランクアップ時に花束いただくことが多いので、(家にほかの花瓶はあるけれど、)これを機に手作りの花瓶で花を飾りたいです」
そして完成したのがこちらの絵。色は、12種類の中から悩みに悩んだ結果・・・高杉さんが好きな色だという黄緑色と黄色の2色を使った花瓶を作ることに。そのほかにも、色の入れ方や、気泡を閉じ込めた模様、口元に細いガラスで巻きつけた模様を入れるなど、デザインを細かく決め、ついにガラスを使った工程へ進みます!
「この時が一番熱かったです。」初の吹きガラスに挑戦!
デザインが決まったところで、目を守るサングラス、腕に布カバーと手に軍手をはめて、ついに吹きガラス体験に挑戦!
高杉さんめちゃくちゃ涼し気なお顔をされていますが、ガラス工房は、溶解炉の熱と制作中にガラスが固まらないようにクーラーもないので、かなりの暑さ。その暑さでより気合いが入ります。
まずは、色付けの工程へ。
黄緑色と黄色のガラスを粒状にしたものを縦状にまとめ、1280度の溶解炉から吹き竿でガラスを巻き取り、粒ガラスの上をコロコロ優しく転がしていきます。ガラスに粒ガラスがついたら、再度溶解炉に入れて溶かして馴染ませます。
「この時が一番熱かったです。ただ先生は表情一つ変えず流石でした。」
そして溶解炉から取り出し、洋ばし(ガラスの形を整えたり、筋目を入れるのに使う金属製の道具)の柄の部分を使って、表面の凹凸を滑らかに整えていくのですが、これがかなり熱い!真っ赤に光り輝く1280度の溶解炉から出したばかりのガラスは、想像を絶する熱さ。この工程の後、後方にある涼しい空気が出る管に手を当てて冷やしながら作業を進めていくのですが、その場では「熱い」などの弱音は一言も吐かず、熱い視線でガラスと向き合い続けます。
そして、メインイベント!ガラスを膨らませる工程へ。溶けたガラスが垂れないようにクルクルと吹き竿を回転させながら、優しく息を吹き込んで少しガラスを広げていきます。
次は泡の模様を入れる工程へ。これには重曹を使用。かるく重曹をまいた板の上に熱したガラスをのせ、側面からてっぺんにかけ真っ直ぐ重曹をつけます。そしてその上からさらにガラスをコーティングすると涼し気な泡が入ったデザインが完成!
次に、新聞紙を重ねて折り、水を十分に浸透させた紙リンというものを使って、ガラスの形状を整えていきます。この時は全く熱くなかったそう。躊躇なく、手の感覚を頼りに表面を整えていきます。
そして、後ほどガラスを切り離すラインにもなる花瓶の口になる部分に、くびれを洋ばしで入れます。
紙リンで表面を整える時も、くびれを作る時も、溶けたガラスが垂れないように、左手では吹き竿を前後に常に転がし続けることが重要!何かの作業に集中するとつい左手が止まってしまいがちですが、その度、先生が声をかけてくれてなんとか綺麗な形に。
撮影を忘れる勢いでより真剣な面持ちでガラスと向き合う
上に向けると縮み、下に向けると伸びる、熱されたガラスの特徴を利用して、花瓶の高さを決める長さだしの工程へ。ガラス部分を下に向けながら、この時も歪まないようにクルクルと吹き竿を回転させることは忘れずに。工程も中盤に差し掛かり、撮影を忘れる勢いでより真剣な面持ちでガラスと向き合う高杉さん。
ある程度高さが出たところで、また何度か吹いていきます。この時も吹き竿をクルクル回転させながら、少しずつ・・・少しずつ・・・そっと吹いていき、丸みを作っていきます。
もう一度、溶解炉で温めて取り出し、今度は大切な底の形を作っていきます。ガラスを平らにするときに用いる「木ごて」で垂直に底になる部分に当てていくのですが、板が斜めにならないようにするのがなかなか難しい!まっすぐで平行な底を作らないと完成した時、いびつな形になったり、安定感を失ってしまうので、より慎重に進めていきます。
そして、また軽く吹いて形を整えたら、ポンテ竿という加工用の竿を底の部分に付け、先ほど作ったくびれ部分から引き離します。
「これがまたよい」失敗も味に
ついに花瓶作りも終盤へ。再度、溶解炉で温め。
左手で前方にポンテ竿を転がしながら、口元に溶けたガラスを細く巻き付けて、柄を作っていきます。この時、少しだけ巻き切るタイミングが遅れてしまい、線の終わりが少し不格好になってしまうハプニングも。でも「これがまたよい」と高杉さん。失敗も味になるのが手作りの醍醐味。より愛着が沸くというものです。
最後の形を整える作業へ。洋ばしを少し広げ気味にして、口元を外と内から挟みながら口元をそらせていきます。さらに洋ばしの先を閉じ気味にして、内側から、そして外側からも洋ばしをあてて、表面が平行になるように整えていきます。この時、右手はあくまで添わせるくらいで、左手だけを動かしている(回転)イメージで進めていきます。そして熱さで滑りが悪くなってしまうので、何度か洋ばしを冷やしながらこの工程を進めていくのですが、実際にやってみると注意するところが多く、かなりの難しさ。
「難しい!先生なんでできるんですか!?」
吹く時も道具を使って形成する時も、力を入れすぎても、抜きすぎてもだめ。またガラスの柔らかさ(熱さ)によっても変わってくる力加減。そんな一筋縄ではいかない吹きガラスの魅力に夢中になりながら、そして先生の手をお借りしつつ進めていき・・・
ついに完成!
「思いのほか自分の絵と同じでびっくりしています!これも先生のおかげです!完成品が家に届くのが楽しみです」と完成した花瓶を見て大満足の高杉さん。
そして最後の工程へ。底のポンテ竿を先生が外してくださり、最後は高杉さんの手で底をバーナーで温めて凹凸をなくし、ついに完成!
完成したら、完全に固まるまで一晩冷却。後日、最初の色決めのような黄緑色と黄色のマーブルカラーになった完成品を、高杉さんのもとへお届けしました。
余談ですが、吹きガラス体験の後は、高杉さんとスタッフ一同アイスを食べてクールダウン。モノづくりの後のアイスは格別!と言わんばかりに、美味しそうにアイスを頬張る高杉さんが印象的でした。
本日のベストショット&一言。
■吹きガラス体験は初めて?
「吹きガラス体験は人生で初めてでした!体験出来る場が東京にあることも知らなかったので、今回体験できて良かったです。」
■実際に工房に入って、吹きガラスを体験してみていかがでしたが?
「工房が暑いということは知っていたのですが、実際に入ってみて想像以上に暑くてびっくりしました。僕は今回一つの物しか作らなかったから短い時間でしたが、あそこで沢山の物を作ってらっしゃることの凄さを感じました。」
■苦戦した工程などはありましたか?
「吹いた後に回す作業が難しかったです。回す速度で形が歪になってしまったりして、それを元に戻そうとしたら更に崩れてしまったりと、上手く作る中で凄く重要だな。と思いました。」
■出来栄えは100点満点で何点?
「少し形が曲がってしまったりしましたが、その形をまた好きになれたので100点でお願いします!!
色もかなり気に入ってます!かなり悩みながら選んだのですが、結果この色と量で良かったな、と思います!」
■お部屋のどこに花瓶を飾る予定ですか?
「パソコンがある机の上に置いています!撮影で頂いたお花などを飾れたら嬉しいです!」
■夏と聞いて連想するものは?
「僕はあまり行かないですが、海や川!ですかね。川くらいだったら行って楽しめたらいいのですが…今年は出来るだけ夏を感じれたら良いなと思っていて、スイカぐらいは買ってお家で食べようと思います。」
■最後に、もう8月!ということで高杉さんのエモい夏休みの思い出(幼少期の)を教えてください!
「家の近くに公園がいくつもあるのですが、虫取り網と虫かごを持って弟達と一緒にその公園を周って大量の虫を捕まえていました。セミやカミキリ虫、蝶々などなど、たまに夜にカブトムシ、クワガタを見つけた時は飛びついていました笑
虫が大好きで、早朝に船で島に行ったりして木を揺らして大量のカブトムシを捕まえに行ったこともあります。それがすごく記憶に残っている夏の思い出ですかね。」
“高杉さんのInstagram(@mahirotakasugi_)には記事では見られないオフショットも!ぜひ合わせてチェックしてください♪”
1996年7月4日生まれ。福岡県出身。
2009年「エブリ リトル シング ’09」で俳優デビュー。以降、映画、ドラマ、CMと幅広く活躍。主演映画『ぼんとリンちゃん』でヨコハマ映画祭最優秀新人賞受賞。第9回TAMA映画賞最優秀新進俳優賞受賞。その他主な出演映画は『散歩する侵略者』(17)、『虹色デイズ』(18)、『ギャングーズ』(18)、『十二人の死にたい子どもたち』(19)、『見えない目撃者』(19)、『超・少年探偵団NEO -Beginning-』(19)、『前田建設ファンタジー営業部』(20)、『糸』(20)、『バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら~』(21)などがある。またアニメ『君の膵臓を食べたい』(18)では主人公・僕の声優を務めている。現在は、7月期放送のドラマ「ホメられたい僕の妄想ごはん」(BSテレ東ほか)では主演を、TVアニメ「RE-MAIN」では声優として出演中だ。ファーストフォトエッセイ『僕の一部。』(幻冬舎)発売中。
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