【樋口幸平インタビュー】全身全霊で臨んだ作品「動けなくなるくらい全力を出し切って。初めて俳優がしんどいと思った」お兄ちゃんのように優しかったという草川拓弥とのお話も。<ショートドラマ「こころ」>
2025.12.7

スーパー戦隊シリーズ「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」で主役を射止め、その後もドラマや映画作品に出演。今秋、ドラマ「恋フレ〜恋人未満がちょうどいい〜」で主演を務めるなど、注目の若手俳優【樋口幸平】のインタビューをお届け。
今回は、「彼」役でダブル主演を務める、日本映画専門チャンネルにて12月8日(月)よる8時から放送のショートドラマ『こころ』についてインタビューを実施。
本作は、夏目漱石の名作『こゝろ』から着想を得た、美しくも儚いショートドラマとなっている。
インタビューでは、「役との向き合い方が変わった」という中川龍太郎監督との撮影現場でのお話、「私」役でダブル主演を務めた草川拓弥との撮影秘話、人との関わりを通して心を動かされた瞬間についてなど、たくさんの質問に答えてもらった。樋口幸平の素直で優しい人柄が伝わってくる心の内に迫るトークもぜひチェックしてほしい。
僕と役とをつなぐ架け橋を作ろうとしてくださった

■出演のお話を聞いたときの気持ちをお伺いしてもいいですか?
樋口 中川監督の作品が大好きで、ご一緒できることがすごく嬉しかったです。
その後、作品の企画書をいただいて夏目漱石の『こゝろ』が原案だと知ったのですが、中学生のときに読んでいた作品だったので、それを自分が演じるんだと、不思議な感覚になりました。
それと同時に、何か自分を変えるきっかけになる気がして、この作品に自分のすべてを懸けないといけないなと思いました。撮影期間はとても短かったのですが、準備にしっかり時間をかけました。

■準備に時間をかけたというのは具体的に?
樋口 衣装合わせと台本の読み合わせが同じ日で、いつものドラマや映画の撮影に入る前の読み合わせの感覚で現場に向かったのですが、中川監督はまず作品のことには一切触れずに僕の生い立ちを聞きたいと言ってくれて。
「なんでこの業界に入ったの?その前は何をしていたの?」と聞かれたので、「19歳のときにサッカーをやめてこの業界に入ったのですが、それまでサッカーしかやってこなかったので、どうしていいかわからなかった」ということを伝えたら、「そのときの感情はこのシーンに合うと思わない?」と問いかけてくださって。僕と役とをつなぐ架け橋を作ってくださいました。
演じるうえでも、セリフを言うというより、このシーンで「彼」がなぜこういう気持ちになったのか。台本に書かれていない裏側の部分をすごく考えました。
確実にこの作品から台本の読み方が変わりましたし、素晴らしい経験と出会いをさせていただきました。
■今までの俳優としての現場とはまた違ったんですね。
樋口 違いました。もちろん今までの作品も全力を出し切ってぶつかっていましたが、概念が変わりました。
気持ちを込めてお芝居をすると一言で言っても、その気持ちになるには理由があって、作品では描かれていない、その役が生きてきた時間があると思うんです。「こころ」の撮影期間は、その描かれていない「彼」の人生を深掘りし続けていました。
この作品以降、セリフを言う前の時間をすごく大切にするようになったので、自分の役との向き合い方も変わったなと思います。
動けなくなるくらい全力を出し切って。初めて俳優という仕事がしんどいと思った


■草川さんは中川監督との撮影を振り返って「セッション」だったと話されていました。樋口さんはどのような印象が残っていますか?
樋口 すべてが初めての感覚でした。カメラを意識させないんですよね。「私」と「彼」が生きている時間を、ただある位置から撮っているような印象でした。
あと、シーンによっては「スタート」の掛け声すら言わないんです。常にカメラを回しておくから、気持ちが整ったら自分のタイミングでスタートしていい。気持ちが先にあるなら、自然にそのときの「彼」の感情になるはずだから、セリフは変えていい。一言一句間違えないようになんて思わず、セリフをセリフとして捉えないで言葉として発してほしいとも言われました。
この仕事をしていると、“気持ちで演じて”、“役を生きて”と言われることもありますが、それってあくまでニュアンスで、正直、実際どうするのが正解なのかわからない部分もあったんです。
でも中川監督は、僕の人間性と「彼」をつなげてくださって、すごく丁寧に「彼」の生き様を映してくれていたように思います。段取りの時間も俳優に話しかけないようにと周囲に伝えてくださったり、役作りの際には「幸平はどう思う?」といつも聞いてくださって、僕ら俳優へのリスペクトがはっきりと感じられました。「彼」や「私」を全力で一緒に作ってくれた監督です。

■一つ一つのシーンに今まで以上に丁寧に取り組めたということですが、それはショートドラマという枠だからこそできた部分もありますか?
樋口 正直それはあると思います。
「彼」が自らの胸の内を「私」にさらけ出すシーンの後、立てなくなったんです。このシーンはNG ではなく、 7テイクやったんです。6テイク目で、自分ではやり切ったと思えるくらい熱のこもった芝居ができたと思ったのですが、監督から「カメラ止めるな。その感情でもう一回やらせてほしい」と声がかかって。その7テイク目でOKが出ました。
体力の限界なのか、感情を壊していくような芝居をしていたからなのか、動けなくなって。それを感じたとき、初めて俳優という仕事がしんどいと思いました。

■その後、ほかの映像作品に取り組んでいますか?
樋口 はい、やらせてもらっています。
ここまで感情を表に出す役柄ではないですが、この作品より前の自分とは確実に考え方が変わったなと思っていますし、役や作品は違えど、「こころ」で得たものが生きていると思います。
■どんな仕上がりになってるのか想像がつかないシーンはありますか?
樋口 「彼」の秘密が明らかになるシーンですね。
あのシーンは、セリフ はなくてト書きだけだったんですが、相手役の俳優さんが、あえてすごく嫌悪感を抱くお芝居で攻めてきたんです。それを受けたとき、「彼」の気持ちに入り込んで、なんでこんなことをしないといけないんだという気持ちが僕の中で破裂して、気づいたら涙が出ていました。
あのシーンはどんな仕上がりになっているのか、楽しみです。
草川拓弥は、お兄ちゃんのような優しい方。全部受けて返してくれた

■拓弥さんと共演する前と今回共演してみて印象は変わりましたか?
樋口 印象は変わらず、まるでお兄ちゃんのような優しい方です。
「彼」が感情的になるシーンで、体当たりでぶつかっても、「私」の感情のまま全部受け止めて返してくれました。「私」は、感情的に話すような役柄ではなく、どちらかというと受け止める役だったのですが、それを全うしてくれました。
■拓弥さんなら受け止めてくれる。そう思えたからこそ、樋口さんも自分なりに解釈し思うままに演じることができた?
樋口 そうだと思います。
段取りやテイクごとに全く違う感情が出てくるのに、 そのすべてに返してくれて、とても感謝しています。
■受け止めてくれるということ以外に、拓弥さんのお芝居に何か感じたものはありますか?
樋口 目でお芝居をしていると感じました。
例えば喧嘩中に放った言葉はとてもきついけれど、目に涙が溜まっていたら、本当は辛いんだなとか。言葉に反して、目を見ると愛していることがわかる、みたいな。
拓弥くんはそれをお芝居で表現されていると感じました。「彼」に対して「お前最低だな」と言っている目の奥の感情が伝わってきたので、対峙しながらすごいと思いました。
相手の心や気持ちについてより深く考えるようになった

■人との関わり合いを通して、心を動かされた瞬間を教えてください。
樋口 俳優の仕事を通して、心を動かされた瞬間はいっぱいありますね。
例えば、全然仕事がなかったときからお互いに知っている俳優と頑張った先でまた出会えたら心が熱くなるし、昔から仲が良かった友達が変わらずにいてくれると安心する。「こころ」をきっかけに、相手の心や気持ちについてより深く考えるようになりました。
■作品や役と向き合う過程で、入り込みすぎて心が疲れてしまうこともあるかと思います。そんな中で、心の健康を維持するためにやっていることはありますか?
樋口 オンとオフをしっかりするようにしています。僕にとって友達は大切な存在で、力まず一緒にいられる友達と過ごすと、どんなに疲れていても、すぐに疲れがなくなりますね。
仕事は仕事として頑張り、プライベートは楽しくと、今後もオンオフの切り替えを上手くやっていきたいです。
どんな状況でも、気持ちをしっかり出して臨むことができる俳優になりたい

■日本映画専門チャンネルでは、樋口さんがこれまで出演されてきた、映画やドラマ、バラエティーも特集されるということなんですが、自分が特集されることについてはどのように受け止められていますか?
樋口 嬉しいですね。自分が関わってきた作品を特集として放送していただけるのは、すごくありがたいです。
これをきっかけに僕のことを知りたいと思ってくださる方が増えてくれたら嬉しいです。
■バラエティーにスーパー戦隊のヒーローに、樋口さんのいろいろな面を見てもらうことに関してはいかがですか?
樋口 「こころ」を見た後に僕が出演しているバラエティーを見たら別人すぎて、え?ってなるかもしれませんが(笑)、そういった姿も見ていただけたらと思います。
■今作も、かなり表現の幅が広がったのではないかと思いますが、普段からそういった部分は意識されていますか?
樋口 そうですね。今後、さらに表現の幅を広げていきたいと思っています。
どんな状況に身を置いたとしても、気持ちをしっかり出して臨むことができる俳優になりたいです。
すごく心に素直に生きている

■タイトル「こころ」にちなんで、改めて樋口さんの心についてお伺いしたいんですが、樋口さんはご自身の心の声に正直なタイプですか?それとも自分の本心があまり分からないタイプですか?
樋口 すごく正直だと思います。嫌なときは顔に出ますし、楽しいときも楽しいって顔に出るので、心に素直に生きているような気がします。
■ご友人と遊ぶ時間もすごく大切にされているとのことですが、人と接するときに大切にしていることはありますか?
樋口 会話をしている中で、この人はこんなことを考えているんだなと、相手の心を考えながら話すようにしています。
自分の心も相手の心も大切にできていたらいいなと思います。
■たくさんのお話、ありがとうございました!

樋口幸平
2000年11月30日生まれ。兵庫県出身。
スカウトをきっかけに芸能界デビュー。スーパー戦隊シリーズ「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」(22~23)で桃井タロウ/ドンモモタロウ役に抜擢。主な近年の出演作品は、ドラマ「体感予報」(23)、ドラマ「Maybe 恋が聴こえる」(23)、ドラマ「約束 〜16年目の真実〜」(24)、映画『追想ジャーニー リエナクト』(24)、ドラマ「離婚弁護士 スパイダー」(24・25)、ドラマ「MADDER その事件、ワタシが犯人です」(25)、映画『ネムルバカ』(25)、ドラマ「恋フレ 〜恋人未満がちょうどいい〜」(25・W主演)などがある。
[X] @kouheihiguchi99
[Instagram] @higuchi_kouhei1130
Photo:Tomohiro Inazawa、Text:Emo!miu編集部 O.E
―INFORMATION―
【ショートドラマ『こころ』】
日本映画専門チャンネルにて、12月8日(月)ほかに独占放送!
放送日時:12月8日(月)よる8時、12月15日(月)よる8時40分、
12月16日(火)よる8時ほか
出演:草川拓弥、樋口幸平、夏子
監督:中川龍太郎
脚本:伊里楚 亮/中川龍太郎
[あらすじ]
駆け出しの小説家である「私」(草川拓弥)が、妻である「彼女」(夏子)と出会ったのは、今から10年前、大学最後の夏だった。私は彼女を、唯一の親友であった「彼」(樋口幸平)に引き合わせる。そのうちに3人は心のうち解け合った仲間になった。その一方で金銭的な問題から彼と同棲をしていた私は、次第に彼の心の奥にある本当の彼を知ることとなり、3人の心情は徐々に変化していく。「こころ」の内を知ってしまった私たちの現在とは……。
<日本映画専門チャンネルでしか観られない「こころ」メイキング>
オリジナルショートドラマ「こころ」撮影の裏側や、キャストのインタビューなど内容盛りだくさんの、チャンネルでしか観られない特別映像をお届け。
放送:12月8日(月)よる8時、12月15日(月)よる8時40分、12月16日(火)よる8時ほか 本編後に放送!






























