【堤幸彦監督×SKY-HIインタビュー】「正しい失敗をしたり、正しい夢の見方を学ぶ経験が少なくなる」ふたりが見る今の10代<ドラマ「ゲート・オン・ザ・ホライズン」>
2025.5.29
BMSG所属のアーティスト・edhiiiboiさん、トレーニーのRUIさん、TAIKIさん、KANONさんが主演を務めるドラマ「ゲート・オン・ザ・ホライズン」がFODより配信中。
沖縄を舞台とした青春群像劇。こちらはSKY-HIさんが企画、そして堤幸彦さんが監督を務めます。
一体どのような経緯でこの企画が立ち上がり、堤監督がメガホンをとることになったのか、クリエティブ面からたっぷりと語っていただいたほか、おふたりが見る「令和の10代」についても!
群像劇を作る、という使命感
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■今回の企画の着想はどういったところからだったのでしょうか。
SKY-HI RUIが所属した2021年ぐらいから青少年ドタバタものは撮りたいな、とは考えていたんです。バディものというよりは、集団もので。ズッコケ3人組もそうだし(笑)、コインロッカーベイビーズとか。
でもTAIKIが所属してより夢が大きくなり、KANONがトレーニーとして所属したタイミングで、「やってみたい」という願望から「やらなければならないこと」に自分の中で段階がひとつ上がったんです。彼らが高校生のうちに、青春ドタバタ群像劇で、ワイワイ仲良く日常を過ごしているな、と思ったら闇社会であったり、社会の猥雑な部分、ほのぐらい部分に巻き込まれていって……ということをやりたかったんです。
そして、こういった作品は堤幸彦監督のような人じゃないと作れない、ということで堤監督のような方はどこかにいないかと探し歩き、3000里ほど歩いたでしょうか……。
堤幸彦監督 ははは! 遠いですね(笑)。
SKY-HI そうしてやっとたどり着きました。
お会いした当日には企画書めいたものをお渡しつつ、お話をさせていただいて。そこから打ち返していただいたのが、この『ゲート・オン・ザ・ホライズン』です。
「SKY-HIは人を愛している」
■もともと面識があったわけではなかったんですね。堤監督はSKY-HIさんにはどういった印象をお持ちだったんでしょうか。
堤監督 アーティスト活動のみならず、次世代のアーティストを育てる事業を立ち上げられて、会社も経営されている。それ自体はレアケースではないと思いますが、独自のコンセプトを持っていらっしゃいます。そのコンセプトが何かというと、傍目に観ているだけで申し上げるなら、「この方は人を愛している」。だから、今回の4人の若者たちを推薦されたときも、「この人が愛している方々であれば、役者としての経験がゼロであったとしてもきっとうまくいく」と思っていました。
だから、乱暴な企画であっていいと思いますし、そういう状況の中に、素直でストレートで、これからの世界を背負っていく目を持った人々が蠢いているなら、おもしろいドラマになるだろうな、と。久々なんですよね、ドラマは。
SKY-HI おおっ!
堤監督 最近はもうしんどいからあんまりやらないんですよ(笑)。
でも、今回はしんどくてもいいし、そのしんどさを背負うべきだ、と思いました。だから、自ら沖縄という地を選び、そこで共同生活をするように作品が作れたことはいろんな意味でよかったですね。それは画の力として現れていると思います。
■今回の舞台は沖縄のコザです。こちらを選ばれたのはどういった意図があるのでしょう?
堤監督 過去にご当地もので、社会問題をはらんだ青春おバカドラマのような作品はたくさん撮ってきたんですが、これもだいぶ前に卒業したと思っていたんです。
そこからいろんなタイプの作品を撮りましたが、あえて今、そういうテイストの作品が望まれるのであれば、日本中見渡してみても沖縄の、しかも那覇ではなくコザという一帯にしかそういう背景はないんじゃないかという確信をこの数年で得ていました。まさに渡りに船と言いますか、いいところに球を投げていただいたな、と思いまして、直電をしまして。
SKY-HI いただきました、直電。
堤監督 コザしかないですよ、と。
SKY-HI コザしかないんですか! と。であるならば、やりますか!
堤監督 と言ったように二つ返事で決まりました。
SKY-HI コザと言った次の瞬間に、キーンと飛行機が飛んでいくカットが入るような、スピード感でした(笑)。
彼らにとって「明確に転機になる作品になったと思う」
■堤監督、SKY-HIさんから見て、4人のキャストのみなさんはいかがでしたか。
堤監督 何度も経験があることなんですが、ミュージシャンのパフォーマーは必ず演技ができるんですよ。そしてできる以上の何かを醸し出すんです。これも数限りなく観てきたことであって、彼らも絶対にそうだろう、と思っていましたが、まさにその通りでした。
ほとんど演技指導もしていませんし、段取りのみをお伝えして成立していました。真面目にセリフも入れていただいていたし、チームに迷惑をかけることも一切ありませんでしたし。デビューというのは人生に一度しかありませんが、見事に高いポテンシャルで最後まで走りぬけていただいたので感謝ですね。
SKY-HI 作品に正面から向き合って、クリエイティブにリスペクトを持って取り組むという実直さや誠実さはもちろん、もうひとつ、バットの振り切り具合というか。もとより、ステージの上でてらいを出すようなフェーズはとっくに抜けている4人でもあったので、堤さんがおっしゃるほどではないにせよ、できるとは思っていました。
でも、本当にバットを振り切ってくれたし、現場で楽しい空気をみなさんに作っていただいたおかげで変な力の入り方がないと言うか。「こういう役柄を演じなければならない」というより、本当に真っ向から向かい合って、まっすぐ振り抜くような……考え得る最高の形で役に入らせていただいた、作品作りに携わらせていただいたという印象です。
彼らもこれから、節目ごとに思い出すでしょうし、明確に転機になる作品になったと思います。
■想定を越えてきた部分はあった?
SKY-HI 想定を越えてきてくれるだろう、という想定はしていました。
■なるほど!
堤監督 それも、4人ともですからね。誰かひとりでも「ちょっと君はね」というのがないんですよ。4人とも、4個性のまま走り続けてもらったので、嬉しい撮影でした。
「人間はあまり強い生き物ではない」
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■クリエイティブの面でもお伺いしたいのですが、人の心の揺り動かすためにどういったことを大切にされているのでしょうか。
堤監督 人の心を動かそうと思って作らない、ということはあります。まず、自分の心が動かなければ誰の心も動かないだろう、ということですね。
人の心は世代や地域、言語だとか、いろんなものに規定されていきますが、全世界共通の「エモい」ことはあるわけです。それにもいろんな種類があって、自分がチョイスした「心が動くもの」こそ自分の作品に成り得るわけで。だから、みなさんに感動してほしいということと、私が感動することが一致していないとうまくいきません。やっぱりどこかでお仕事になってしまう。それは避けたい。もう70歳になるので、この年ではもう避けていこうじゃないかと。その一発目がこの作品です。
SKY-HI ありがとうございます。
非常に親和性が高い話になりそうでホッとしましたし、ありがたい、嬉しい気持ちです。
邪念がない、ということは本当に大事だな、と思っていて。人の心を動かそうと思わないこと、と堤さんがおっしゃっていたんですけど、実際にマーケティングめいたもの……ニーズがどうとか、どういう視聴者が観るのか、ということは後付けであっても良いと思うんです。
まず、スタートの段階で、何がやりたいか、何がおもしろいかとか、そういったことに純粋に振り切る。
人間ってあまり強い生き物ではないので、気がつくと邪念が入りがちです。そういうものとは意識的に距離を置くようにしていかないと、クリエイティブはやっぱり濁るし、逆に意識的に距離を置いていると、たまに神様からのご褒美みたいに無意識的にそういうものから取り払われたものに出会えたりするんですよね。
堤監督 真理ですね。
SKY-HI そんな気がします。
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■SKY-HIさんの中に、それが実体験としてあるんですね。
SKY-HI そうですね。特に自分はキャリアの中でずっとその戦いがあったので。
それこそ、AAAというアイドルグループに対してもそうですし、ラップが聴かれることがない時代にどうすればラップミュージックがチャートにのるか、とか。
コロナ禍以前はその都度、作戦めいたものや、ロジックみたいなことに向き合う時間はとても長かった、と思っています。その結果、自分の人生の中で誇れるものや、心に残っているもの、それこそ、棺桶に入れてほしいものというのは、そういったものが取り払われたものでした。そこまでの苦悩やトライアンドエラーはそういうフェーズだったのかな、と思います。
「夢の見方を学ぶ機会がない今の10代」
■おふたりともいろんな時代の10代を見て来られたかと思います。彼らもそうだと思うのですが、今の令和の10代をどのように捉えていらっしゃるのか、それぞれの視点で最後にお聞かせいただけますか。
堤監督 年齢を経ていくと、宿命的に10代と相いれない部分は絶対にあるわけです。私が10代のときに30歳以上の人間は信用しないと言って、30歳を過ぎると40歳以上の人間は信用しないと言う(笑)。結局、60代末期になってしまったわけですが、まず相容れなくて当たり前。絶対にその時代でしか語れないことも、見えないものがあります。そういうものは、経験値を詰んだ我々には見えなくなるわけでして。まずはそれを認めるというか、諦めるというか……。経験でもって「いやいや、お父さん世代はね、こういういいことがいっぱいあったから君たちもそうすべきだ」なんてことを言った時点で親ハラスメントですね。
SKY-HI ははは!
堤監督 だから、それはやめようと。
私は素直な自分の60代の目線でしか世界を見つめることができません。ただ、問題なのは、10代の彼らをいかに光輝かせるか、という番組を作るときは、15歳の自分がどういう回路でワクワクしたかな、ということは、時間はかかりますが取り戻す努力はしないとできませんね。
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SKY-HI 今、質問いただいたことは、特に今年の自分にとって、ビッグテーマなんですけど、サブキャッチに置いているのは、「全ての10代とかつての10代だった全ての人たちへ」。
堤監督 全部じゃないですか!
SKY-HI いや、0歳から9歳を取りこぼしちゃってるんですよ(笑)。
人間、年齢を重ねても本当に変わらない部分があります。今の10代と、僕らのころの10代と、堤さんのころの10代とで変わらないものが同じであったり。普遍的で一般的に言われる「10代だけが持つもの」ですよね。
一方で、時代によって変わることで言うと、IWGPの頃は池袋って若者の街だったと思うし、自分は渋谷が若者の街だった時代に生きてきました。で、最近の10代に「若者の街ってどこなの?」って聞いたら「そんなものないですよ」って言うんですよ。
確かに思い起こせば、渋谷には宮下パークができて、ハイブランドが並ぶようになり、とても高校生が買えるようなものじゃない。僕らの時代なんて、1円も使わなくても楽しかったし、同じような人がたくさんいたんですよね。
でも、今はインターネットに居場所はあるけど、リアルでの居場所がない。そうなってくると、どんどんフィジカルよりもバーチャルに依存して、現実問題として、正しい失敗をしたり、正しい夢の見方を学ぶ経験が少なくなるな、と。それはエンターテイメントの責任だと思うんですよね。エンターテイメントが、彼らが見たり聞いたりしていないことを経験させきれてないのかな、という反省もある。事実として夢の見方を学ぶ機会がない10代っていうのが増えてることはすごくもどかしい。
大きいことを言っちゃうと、国力の損失に感じているので、今一番盛り上げたい世代がそこにあるのは自分にとって今年の大きいテーマです。
■ありがとうございました!
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SKY-HI
1986年12月12日生まれ。千葉県出身。
「空のように高く無限の可能性を」― 卓越したラップ&ダンス&ヴォーカルスキルと豊かな音楽性、ジャンルの垣根を越えた存在感から他に類を見ないパフォーマンス。HIPHOPシーンのみならずROCKやサブカルシーンにおいても注目を集める。フルバンド+1DJ、4名のダンサーと、2名のコーラスを入れた総勢16名の「SUPER FLYERS」の中心に立ち、自らがバンド音源や演出、照明に至るまでプロデュースするライブツアーは毎度完売が続出。緻密に計算されたストーリーとメッセージが詰まった広い振れ幅の作品たち。自身が紡ぎあげる楽曲の詞にはリリシストとしての力量を遺憾なく発揮し、オリジナリティ溢れる世界観と完成度が毎回話題、音楽業界内外からも注目を浴び エンタテイナー・SKY-HI として名を轟かせている。
[Instagram] @skyhidaka/
@skyhi_staff
[X] @SkyHidaka
@skyhi_staff
[TikTok]@sky.hidaka
堤幸彦
1955年11月3日生まれ。愛知県出身。
オムニバス映画「バカヤロー! 私、怒ってます」(88)の一編「英語がなんだ」で映画監督デビュー。
その後、『金田一少年の事件簿』『ケイゾク』『池袋ウエストゲートパーク』『TRICK』『SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜』シリーズなどで監督を務め、ドラマ・映画ともにヒット作を世に送り出す。その他、日本アカデミー賞の優秀作品賞を受賞した『明日の記憶』(06)や、『20世紀少年 三部作』(08〜09)、『はやぶさ HAYABUSA』(11)、『人魚の眠る家』(18)、『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”』(21)などで監督を務めている。現在は、映画『page30』@渋谷ドリカムシアター 絶賛上映中、『THE KILLER GOLDFISH』@シモキタエキマエシネマK2 絶賛上映中。
[HP] http://www.crescendo.co.jp/creators/tsutsumi.html
―INFORMATION―
<ストーリー>
見たもの全てを覚えてしまう主人公・タクは繰り返される毎日に飽きて、那覇からコザの高校に転校する。面倒ごと避けたいタクだったが、同級生のミック、ヨウジとともにコザの個性的な沖縄の不良たちに絡まれ、抗争に巻き込まれていく。そんな中、東京出身のメンヘラ少女アオイと出会い…
オフビートでコミカル、シニカルでエキセントリックな南国青春グラフィティが今、幕を開ける…!
【ゲート・オン・ザ・ホライズン〜GOTH〜】(全8話)
配信:2025年4月18日(金)より配信スタート 毎週金曜日21:00最新話配信
出演:RUI、TAIKI、KANON、edhiii boi、服部樹咲、池田鉄洋、戸田恵子 ほか
企画:SKY-HI
監督・原案:堤幸彦
監督:平一紘(3話・4話)、池辺安智(6話・7話)
脚本:池田テツヒロ
脚本協力:平一紘
エグゼクティブプロデューサー:下川猛
プロデューサー:鹿内植/坂上真倫
ラインプロデューサー:松永弘二
制作協力:ネクストヒーローズ沖縄
制作プロダクション:オフィスクレッシェンド
企画協力:BMSG
制作著作:フジテレビ
[HP] https://www.fujitv.co.jp/goth/
[Instagram] @goth_foddrama
[X] @goth_foddrama
©フジテレビ
Photo:Tomohiro Inazawa、Text:ふくだりょうこ