【板垣李光人インタビュー】「欲がなかったらこの仕事は続けられない」作品に貪欲に向かい合う欲が芝居を変えていく<映画『陰陽師0』>
2024.4.27
時代は平安――。雅なイメージのあるこの時代を生きた安倍晴明。これまでにも多くの作品に、さまざまな形で登場してきており、その存在を詳しくではなくとも知っている、という人は多いはず。
そんな安倍晴明が陰陽師になる前の物語を描いた映画『陰陽師0』が公開された。若き日の陰陽師を演じるのは山﨑賢人さん、彼に怪奇現象を解決するように依頼してきた貴族・源博雅を染谷将太さんが演じる。
この物語のキーマンのひとりとなるのが、【板垣李光人】演じる帝――村上天皇。彼が贈った文が物語を大きく動かすことになる。
今回は板垣さんに陰陽師の魅力についてインタビュー。また、最近、心を動かされた映画についてもお聞きしました!
「帝」の空気を作るために
■まずは今作への出演が決まったときの気持ちからお聞かせください。
板垣李光人 そもそも陰陽師は、野村萬斎さんの作品も見ていましたし、「呪術廻戦」も観ていたということもあり、好きでした。今回、自分がその陰陽師の世界に入ることができる、その作品を作ることに携われるのは純粋に嬉しかったです。
■今回、ご自身が演じられた村上天皇についてはどのような印象を持たれましたか?
板垣 僕も劇中では小林薫さんと國村隼さんと、あとは染谷さんにしかお会いしていないということが物語っているくらい、この時代の天皇という存在は会える人も限られている人物です。普段は御簾の内側にいるような人なので、その雰囲気というのは、本を読んでもそうですし、このお話をいただいたときから、どういうふうに出していけるかな、と考えるところはありました。
■演じるにあたって、どのような準備をされたんですか?
板垣 特別なことはしていないです。いつも通りの役作りという感じでした。ただ、周りの外界の時間の流れだったり、空気の流れみたいなものが違うさまをどういうふうに出していこうかな、というところは考えました。
あとはこの時代の身分の高い方たちって、印象としてすごく雅で、優雅で、というところはありますけど、なんでそうなるのか、というところは考えました。それはやっぱり圧倒的なものと孤独があるから、そういう雰囲気なんだろうな、というのはあるので、一挙手一投足で現していけたらいいな、と思いもありました。
■作品を拝見していても、本当に雰囲気や空気が雅で、振る舞い自体も難しそうだな、という印象を受けました。
板垣 はい。衣装を着て、あの場所に座るともう動けないんですよ。ずっとあの場所にいました(笑)。
袴が(奈緒演じる)徽子女王と同じように女性用のものなんですよ。要はすごく長くて、それを踏んで歩くんです。打掛も長いですし。で、場所も、博雅と喋るシーンでも距離があって。一段高くなっているようなところだったので、それも帝に通ずるようなところがありました。
龍笛は「家でピーピー吹いてました(笑)」
■難しそうと言えば龍笛を吹かれるシーンもありましたが、それも練習されて?
板垣 そうそう、やりました、やりました。
竜笛は音を出すのが大変なんですよ。下側から息を当てるんですけど、その息を入れるところのスイートスポットみたいなのがあるんです。その感覚をつかむのが難しかったです。
■どれぐらい練習されたんですか?
板垣 どれぐらいしたかなあ。でも結構しましたよ。笛も頂いて、家でもピーピー吹いて練習していました(笑)。でもちゃんと音が出るようになりましたし、劇中で吹いてたのはできます。吹けます!
■じゃあ、今後また龍笛を吹く役が来ても……。
板垣 続けてないとわからなくなるんですよ(笑)。
またこれまでと少し異なる「安倍晴明」
■完成した作品はご覧になっていかがでしたか?
板垣 映像はもちろんですけど、音楽もすごく素敵でしたし。僕も試写で観たんですけど、ちゃんとDOLBY ATMOSとかで大画面で観たいな、と思いました。
■確かに、迫力がすごそうですよね。
板垣 あと、呪いというものは結局人間の業だったり、欲望だったり、と因果があって生まれているところの血なまぐさがあります。
徽子女王もすごくリアリティがある。世界観自体はファンタジーに近しいけど、そういった人間の描写はすごくリアリティを持って描かれているので映像とそういった部分の対比がおもしろいなと思って観ていました。
■先ほど、野村萬斎さんの作品も観ていらした、というお話がありましたが、安倍晴明はいろんな作品で描かれてます。今回、山﨑賢人さんが演じた安倍晴明にはどういった印象を抱かれましたか。
板垣 今回は「0」って言っていますけど、だいたいイメージにあるのってこの「0」のあとの安倍晴明で。でも今回、山﨑賢人さんが演じられた安倍晴明を見ることで、より一層、解像度が上がるなと思いました。本当に狐のような、飄々とした、というか。人間なのかもわからない、みたいな怪しさや空気感を山﨑さんが出されていたので、そこもすごく素敵でした。
役者に「欲」は必要
■さっき、呪いは人間の欲と因果があると言っていただいたんですけど、やっぱり物語の一つのキーワードが「欲」でもあるのかなと思います。板垣さんがお仕事で持っている「欲」をご自身で感じた部分はありますか?
板垣 やっぱり「欲」はありますよ。なかったら、この仕事は続けられないと思います。
■具体的にはどういった欲になるんでしょう?
板垣 役者、表現する者として、毎回その作品に対して120%で臨みますけど、どれも完全ではないじゃないですか。「じゃあ次はここをどうするか」だとか、完成した作品を見ても、「今だったらここをこうするな」と思うんです。映画は特に撮影してから公開までの期間が空くので、完成したものを見てそう思うことしかないです。そういう欲がなくなったら役者としては死んでしまうし、常に持っていないといけない欲だと思います。
■プライベートではいかがですか? これがやりたい、だとか、これが欲しい、だとか。
板垣 プライベートの欲と言うと、だいたい買い物になります。服!
■最近、気になっているものはありますか?
板垣 夏も近いので、ジュエリーです。
■肌見せもしつつ、ですね。お忙しいから、買い物する時間を確保するのも難しそうですが……。
板垣 そこは作ります!(笑)。
「とにかくすごい!」と板垣さんが言う映画は?
■最近、心揺さぶられた出来事について教えていただきたいなと思うのですが、いかがですか?
板垣 最近はスキあらば映画館に通い詰めているんです。それでこの前、「ビニールハウス」という映画を観たんですけど、……すごかったです。もう後半はほぼ感情はなかったです。
■感情がない……!?
板垣 救いがなさすぎて。端的な言葉で言ってしまえば、鬱映画でした。
■良い作品だと勧められたんですけど、元気があるときに観た方がいい、とも言われました(笑)
板垣 はい……それは間違いないです。後半30分ぐらい虚無でしたから、僕。すごかったです。
■映画を選ぶ基準ってご自身の中で何かあったりするんですか?
板垣 大体、幕間の予告を観て「次はこれとこれは観る!」って決めたりしていますし、その日、近くの映画館で何をやっているのかバーッと観て「じゃあこれ観に行こう」っていうときもありますし。
■「ビニールハウス」はどういったチョイスだったんですか。
板垣 「ビニールハウス」も観に行った幕間の予告で流れてて、その流れで観ようと思って。あとは、主演のキム・ソヒョンさんが「SKYキャッスル」っていうドラマで拝見して、すごく素敵な方だなと思っていたので、それもありました。
多角的な楽しみ方ができる作品
■「陰陽師0」も映画の幕間で予告を観て気になった方もたくさんいらっしゃるかと思います。最後に板垣さんが考える、本作の心揺さぶられるポイントについて教えてください。
板垣 視覚的なエンタメの要素もあるし、CGなどの壮大さや映像美を楽しむことももちろんできますし、純粋にサスペンスとしてもミステリーとしても、そして、人間関係を深く描いているヒューマンドラマ的な視点でも楽しめます。多角的な楽しみ方ができるのはこの作品の大きな魅力かなと思います。
■素敵なお話をありがとうございました!
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板垣李光人
2002年1月28日生まれ。
出演作に、「仮面ライダージオウ」(18~19)、『約束のネバーランド』(20)、「青天を衝け」(21)、「ここは今から倫理です。」(21)、「カラフラブル〜ジェンダーレス男子に愛されています。〜」(21)、「シジュウカラ」(22)、「silent」(22)、「どうする家康」(23)、『なのに、千輝くんが甘すぎる。』(23)、「フェルマーの料理」(23)、『劇場版 君と世界が終わる日に FINAL』(24)、「マルス-ゼロの革命-」(24)、『ブルーピリオド』(24)、『八犬伝』(24)などがある。
[X] @itagaki_rihito
[Instagram] @itagakirihito_official
ヘアメイク:KATO
スタイリスト:長瀬哲朗
―INFORMATION―
【映画『陰陽師0』】
大ヒット上映中!
キャスト:山﨑賢人、染谷将太、奈緒、安藤政信、村上虹郎、板垣李光人、國村隼/北村一輝、小林薫
原作:夢枕獏「陰陽師」シリーズ(文藝春秋)
脚本・監督:佐藤嗣麻子(『K-20 怪人二十面相・伝』『アンフェア』シリーズ)
音楽:佐藤直紀
呪術監修:加門七海
[HP] https://wwws.warnerbros.co.jp/onmyoji0/
©2024映画「陰陽師0」製作委員会