杢代和人「メンバーが僕を含めてこの7人で良かったし、何より観測者があなたで本当に良かったと思います。」血と汗と涙のにじんだ4年の果てに掴んだ大舞台【原因は自分にある。】が自身初のアリーナ公演を開催!
2023.11.6
2019年のデビュー以来、2次元と3次元を行き来する新時代のエンターテイメントユニットとして活動してきた7人組の原因は自分にある。(通称・げんじぶ)が、キャリア初となるアリーナワンマン『因果律の逆転』を、11月5日にぴあアリーナMMにて開催した。グループ活動のみならず、テレビや舞台では俳優としても活躍し、着々と表現力をブラッシュアップしてきた彼ら。一筋縄ではいかない感情を彩り豊かなダンス&ボーカルに落とし込み、そこに前衛的でインパクト抜群な演出を交えて、集まった1万人の観測者(げんじぶファンの通称)に極上のエンターテイメントと、胸躍るステージング、そして大きな感動を与えてくれた。
物事の変化を起こす原因は“自分たち”にあるとグループ名で語ってきた彼らだが、今回の『因果律の逆転』という公演タイトルには、その原因が自分たちから“ファン”へ“逆転”するという意味合いが。さらに、数々の“逆転”の中で彼らが彼らたる所以を存分に感じられるライブにしたいという想いが込められているのだという。そんな“表”と“裏”の逆転を象徴するかのように、開演時刻になるとメンバーが1人ずつコインを握るオープニング映像が流れる。そして天地逆転した7人が映り、火花が鳴るのを合図に艶やかな赤幕が振り落とされると、ステージ前面に堂々並び立ってカメラを見つめる7人の姿が現れ、セルフタイトルのデビュー曲「原因は自分にある。」で記念すべきステージは幕開けた。
鮮やかなブルーの衣装をまとい、ダンサブルなトラックアレンジも交えつつ、彼らの代名詞とも言えるピアノロックで色めいた表情を見せつければ、推しメンカラーのペンライトを振る観測者で場内は熱狂の渦。モニターに浮かぶリリックとパフォーマンスが融合する「嘘から始まる自称系」に、意味深なグループ名にふさわしい哲学的なリリックが満載の「柘榴」では、ステージ左右のお立ち台へ7人そろって移動して、今、現在の原因は自分にある。の姿を高らかにアピールしていく。ポエトリーラップに蒼い光が差し込んで鮮烈な印象を与える「灼けゆく青」に、げんじぶの持ち味の一つであるシニカルな表情を濃厚に滲ませた「無限シニシズム」まで、なんとノンストップで5曲をメドレー。平均年齢19.8歳の若きエネルギーを、序盤から全開にする。
疲労も見せず「来たぜ、アリーナ!」と大倉空人が意気込めば、「一夜限りのスペシャルな時間、最高に楽しんでいきましょう」と、リーダーの吉澤要人もニッコリ。さらに「この広いアリーナ、みなさんの近くに会いに行っていいですか?」と、それぞれメンバーカラーの電飾が光るトロッコに乗って、アリーナ客席に出発進行する。「ネバーエンドロール」に「チョコループ」と、甘くて切ない“げんじぶ流”ラブソングで手を振りキュートに踊って、外周のスタンド席まで真っすぐに愛を届けていく彼らの笑顔は破壊力抜群。かと思えば、トロッコを降りてセンターステージに集ってからは一転、エレクトロスイング「Joy to the world」にエレクトロヒップホップ「GOD釈迦にHip-Hop」で、全方位に向け躍動する。観測者たちに囲まれてのダンスが、より立体的なフォーメーションを際立たせると同時に、ステージにあがってメンバーに迫るカメラがリアルタイムでモニターに映す映像の臨場感も満点で、客席からは大音量のコールと“き・き・きすみー!”の大合唱が。360度どこから観ても隙なく、それでいて瞬間のエモーションを大事にしたパフォーマンスに、確かな進化を感じさせられた。
初めてのアリーナ公演で、吉澤いわく「ずっと憧れだった」という初トロッコを果たし、また、ファンに囲まれたセンターステージも初ということで、長野凌大は「どうしてもやりたいことがある」と、客席を360度ウエーブさせてステージを周回。続いて「久しぶりに、あの曲やってみません? あの可愛い曲、聴きたいか?」と武藤潤が問えば、「みなさんクラップお願いします!」と桜木雅哉がクラップを誘い、始まったのは「ジュトゥブ」だ。カメラにキスやウインクを投げるメンバーを間近でとらえたカメラ映像もモニターに大写しにされ、杢代和人が吉澤の頬にキスすれば、吉澤も杢代をお姫様抱っこ。久々すぎる光景に歓喜する客席に向かい、最後は桜木が“観測者、大好き!”とピースを決めて、さらなる歓声を引き起こした。そこに単なるファンサービス以上のものが見えるのは、彼ら自身が今、この瞬間を心底楽しんでいるからにほかならない。
ここで『因果律の逆転』の物語は、最初のターニングポイントを迎え、モニター上ではメンバーがコインを手元に置き、順番に蝋燭に火をつけていく映像が。そこから抜け出たかのように、ステージ上で杢代がテーブル上の蝋燭に火をつけると、8月末に配信された最新曲『蝋燭』を小泉光咲が歌い始める。7人が主演したテレビドラマ『沼オトコと沼落ちオンナのmidnight call 〜寝不足の原因は自分にある。〜』の主題歌でもあったチルポップナンバーを、吉澤のバリトンをリードボーカルにして静かに、けれど、情感をにじませて贈る彼らが漂わせるのは、短編映画のようなシックな趣き。最後に、蝋燭の灯ったテーブルについた7人の画も、まるで1枚の絵画のようだ。
そして場面は7人が二手に分かれてのユニットブロックへと移り、まずはセンターに武藤、上手に小泉、下手に桜木と、3人が順にスポットを浴びて、アカペラで「スノウダンス」を歌唱。初のアカペラで感情を放出するかのように歌い放った桜木のように、間も呼吸もすべて心のままに叶わない想いを歌声へと落とし込んだ次の瞬間、スモークの立ち込めるセンターステージに現れたのは大倉、長野、吉澤、杢代の4人だ。赤黒モチーフの衣装に着替えて足下からバチバチのライトに照らされ、アグレッシブなダンスを軸に「J*O*K*E*R」でワイルドの牙を剥く様は、先ほどの3人とは実に対照的。げんじぶの豊かな表現力を、まったく異なるタイプの物語に落とし込んで幅を見せてから、今度は7人で「犬と猫とミルクにシュガー」を投下するという流れも上手い。「スノウダンス」組の3人が本ステージから、「J*O*K*E*R」組の4人がセンターステージから花道に迫って合流し、大倉、吉澤、桜木は歪んだ声でラップの応酬を交わして、けんじぶならではの冷めた攻撃性を露わにする。
MCでは二手に分かれてのユニット曲を振り返り、それぞれに考案したチーム名を発表。偶然にも黒髪メンバーが集まったことから、「スノウダンス」組は3人の頭文字を取って“黒髪マッチ売りのむまこ”と武藤が決めて、小泉と桜木を困惑させる結果に。逆に「J*O*K*E*R」組は4人の明るい髪色と、大倉が主演するテレビドラマ『君となら恋をしてみても』で彼が演じる役名・天(あまね)にちなんで“きんさんぎんさんとらさんあまさん”と杢代が決定。どちらのネーミングにもペンライトを掲げる観測者に、大倉は「みんな優しい!」と告げてほっこりムードで場内を包んだ。
後半戦は、多彩なジャンルを盛り込んだダンストラックでスタート。大倉と桜木が対峙して互いを操りやり合うヒップホップ、小泉と吉澤が流れるように舞うジャズ、武藤、長野、杢代がビートに乗って跳ねるハウスと、異なるタイプのダンスで魅了し、続く「Mr.Android(feat.izki)」では心を持ったアンドロイドの悲痛を長野と桜木が熱唱する。
そして『因果律の逆転』の物語はクライマックスへと至り、この日のために撮り下ろされた映像内で、メンバーが『因果律の逆転』を目玉とする“0 美術館”へと観測者をご案内。そこで、あらゆる出来事には必ず原因が存在し、それによって結果が生まれるという“因果律”の理念を語っていく。それが逆転するというのは、げんじぶを理由として観測者にさまざまな事象が起きていたはずが、観測者が支えるからこそげんじぶが成り立ち、観測者を通してげんじぶの作品が生まれるということ。つまりは今日のステージこそ、観測者を原因として生まれた結果であり、『因果律の逆転』の産物であるということだ。その逆転現象をステージ上で具現化すべく投下されたのは、メンバーの「美術館、展覧会のような音楽表現がしたい」という言葉をきっかけに、本公演のテーマ曲として書き下ろされた「Museum:0」。
シンセ音が鳴ってモニターが上がると、“Welcome Back! Museum: Zero!”という歌い出しをきっかけに、なんと、メンバーの乗るX型の巨大トラスタワーが火柱をあげながら前へと迫り出してくるのだから、場内の歓声は高まるばかりだ。LEDに流れる鮮やかな映像を背にして、ギターとピアノが狂気に唸る攻撃的ロックビートに、高低差の激しいエモーショナルなボーカルとアーティスティックなダンスが弾ける様は、いわゆるインスタレーションのようで、新たな芸術を目の当たりにした心地にさせられる。“何処にもないなら 描いてしまえばいい”と大倉が歌い上げるフレーズは、まさしく原因は自分にある。というグループの精神そのもの。これまでのげんじぶとは一味も二味も違うダイナミックなナンバーに、場内の熱気がグッと上がるのも当然だろう。続く「余白のための瘡蓋狂想曲」でも、熱のこもった超高速ダンス&ボーカルに目を射る照明、モニターにフラッシュするリリックがあいまって、ライブステージが総合芸術であることを実感させる。
さらに、武藤を筆頭に情熱的なボーカルとラップが爆発する「Lion」でセンターステージへと飛び出し、噴き上がるファイヤーボールで場内を湧かせると、問答無用の”カッコいい”に振り切ったダンスチューン「0to1の幻想」へ。ロックとエレクトロという異なるベクトルでの“極地”を表現し、げんじぶの音楽的キャパシティを見せつけたところで披露されたのは、彼ら自身を最もストレートに投影した「藍色閃光」だ。輝くミラーボールの下、こみ上がる想いをそれぞれに乗せた歌声を丁寧に重ね、一つひとつに意味のある動きで結成からの道のりを綴り、本ステージに戻った7人が呼吸を合わせて共に歌い、踊りだすと、LED上では7枚のコインが重なって1枚の大きなコインに。さらに、藍色の宇宙を走る閃光がメンバーカラーの七色に光ると場内を純白の光が行き交い、観る者の高揚感を高めて、血と汗と涙のにじんだ4年の果てに掴んだ大舞台だからこその感動的な光景を創り上げてみせた。
そして長野が「僕たちがあなたに歌って、あなたは僕たちに歌ってください」と呼びかけ、「原因は君にもある。」でフィナーレへ。力を振り絞り、汗だくになってのパフォーマンスのクライマックスでは、杢代が“観測者、大好きだよ”と歌い替え、観測者たちが贈る大合唱に、武藤が涙を止められなくなる場面も。大倉も目を赤くして「最高です!観測者!」と感謝し、長野は「原因は自分にもあって、君にもあるんです。いや、原因は君にしかないんです! また、ここで会いましょう。バイバイじゃなくて、またね」と告げて、原因は自分にある。と観測者による『因果律の逆転』の物語を完結させた。
やまぬ声に応えて「シェイクスピアに学ぶ恋愛定理」で始まったアンコールでも、イメージカラーを用いた凝った衣装で登場してげんじぶの美学を表し、メガネをずらす長野に大歓声が。「次はこの曲でみんなの近くに行って、一緒に歌って踊っちゃいましょう!」と杢代が煽って、再びトロッコでアリーナの海へと漕ぎ出せば、客席からいつにもまして大きな“炭酸水!”のコールが湧く。小泉も「クラップで、ぴあアリーナ響かせましょう!」と張り切って声をあげ、武藤は「キミに出会えたことが奇跡なのさ!」と想いが溢れ出す。そこから一人ひとりが想いを語り、大倉は「今日のライブは本当に僕にとっても特別で、いろんなスタッフさんや作品を共にした仲間、親友、家族、本当に特別な人が来ています。僕の大切な人に、僕が今一番大事にしている観測者のみんなを紹介できて本当に嬉しかったです」と破顔する。続いて小泉は「半年くらい前から準備してきたこの一瞬を、大切な思い出にできて本当に良かったなと思います」と、最年少の桜木は「高校生のうちにアリーナに立つという目標を達成できて嬉しい限りです」と頭を下げた。長野は、今日に至るまでの日々が楽しいだけではなく、辛かったり苦しかった日もあったと明かし「でも、きっとそれはみんなも同じで、それでも、こうして好きな音楽のために同じ場所に集まって、同じ感情を共有して、同じ音に乗るのが、僕がライブが好きな理由です。みんなが数年後、げんじぶの初アリーナに行ったんだよって自慢できるグループに絶対なるので、これからも手を取って、目を見合わせて、一緒に進んでいけたらなと思います」と宣言した。そして「この景色は絶対に忘れません! メンバーがいたから、観測者がいたから、ここまでやってこられました。本当に、たくさんの愛をありがとうございました!」と万感の想いを告げた武藤に続き、涙に暮れたのは杢代和人。
「伝えたかったことがあって……本当に僕は皆さんにたくさん助けられたし、たくさん励みになったし、本当にありがとうございます。いろんなことがあったけど、メンバーが僕を含めてこの7人で良かったし、何より観測者があなたで本当に良かったと思います。僕たちはまだまだ夢の途中なので、これからも見たい景色がたくさんあります。なので、これからも一緒に手を取り合って、一緒に歩んでいけたら嬉しいです。本当に生きててよかったです」
昨年の夏撮影のため約1年間グループ活動を制限していた彼にとって、今回のアリーナ公演はグループ復帰後の大舞台。自身が不在の間、げんじぶを支えてくれたメンバーと観測者への想いがあふれ出す様に、その場にいたすべての人々が心を寄せたに違いない。最後はリーダーの吉澤が「僕からはただ一つだけ。メンバーと観測者の皆さんと、これからも笑い合って、会場で楽しい空間を共にしている、そんな明るい未来が見えるライブになりました。これからも僕らと一緒に未来に向かって歩んでくれたら嬉しいです!」と締めくくり。そこから「このアリーナの景色を7人で想像しながら歌ってきた曲です」とラスト曲の「THE EMPATHY」を爽快に贈り、思い出に残るステージの最後に温かく、喜びに満ちた“EMPATHY=共感”を分かち合う。メンバーそれぞれが観測者に歌いかけながらセンターステージへと進み、観測者たちの真ん中で “I’m a Believer”と高らかに歌い上げる彼らを包むのは噴き上がる金吹雪。最高の多幸感のなか、最年長の武藤が「これからも僕たち7人で突き進んでいきます。ともに進んでいきましょう!」と約束し、7人で手をつないで「本日は本当にありがとうございました!」とマイクレスで一礼して、彼らにとって間違いなく節目となるライブの幕は閉じられた。
観測者の興奮冷めやらぬなか、終演後のモニターには「また、“あなた”と同じ空間を」の文字が浮かび、5都市を回るホールツアー『架空のアウトライン』の開催が告知。来年3月から宮城、埼玉、愛知、福岡、大阪をホールで回る規模はげんじぶ史上初で、小泉の地元である宮城県での初ワンマンが含まれているのも注目だ。
原因と自分にある。と観測者は、一方通行の関係ではない。どちらもが原因であり、どちらもが結果である。その双方向の関係性は、やがて一つの環となり、終わることのない永遠の軌道を描いていくのではないかーー。そんな未来を、これから期待していきたい。
―Set list―
M1.原因は自分にある。
M2.嘘から始まる自称系
M3.柘榴
M4.灼けゆく⻘
M5.無限シニシズム
M6.ネバーエンドロール
M7.チョコループ
M8.Joy to the world
M9.GOD釈迦にHip-Hop
M10.ジュトゥブ
M11.蝋燭
M12.スノウダンス
M13.J*O*K*E*R
M14.犬と猫とミルクにシュガー
M15.DANCE TRACK
M16.Mr.Android(feat.izki)
M17.Museum:0
M18.余白のための瘡蓋狂想曲
M19.Lion
M20.0to1の幻想
M21.藍色閃光
M22.原因は君にもある。
EN1.シェイクスピアに学ぶ恋愛定理
EN2.ギミギミラブ
EN3.THE EMPATHY
text:清水素子
photo:米山三郎、冨田望