「(一也のように、)ダンスでスランプに陥ったこともあったー」佐藤大樹 映画『小説の神様 君としか描(えが)けない物語』インタビュー
2020.10.3
EXILE/FANTASTICSのパフォーマーとしてアーティスト活動する一方、近年は俳優として話題作にも出演している、今最も目の離せないメンズの一人【佐藤大樹】にインタビュー。
2020年10月2日(金)全国公開の映画『小説の神様 君としか描(えが)けない物語』では、主演を務め、中学生で作家デビューしたものの、売れず思い悩む高校生小説家という難しい役柄を見事に演じている。
本インタビューでは、自身とは対照的な主人公・千谷一也を演じる上で意識したポイント、今作が初共演で共に主演を務めた橋本環奈や、友人役を務めた佐藤流司の印象や、撮影秘話について、また、最近“エモい”と感じたエピソードや、ダンサー・役者を志したきっかけなど、パーソナルな部分までたっぷり伺いました。
目の演技を意識
■原作を読まれた感想と、千谷一也を演じる上で意識したことを教えてください。
佐藤大樹(以下 佐藤) 小説家が作品を作る上で、どんな苦労や葛藤があるのか知る機会ってなかなかないと思うんです。それを小説家さん自らが書いていることがとても新鮮で、面白かったです。もともと、何かをする人の裏側が描かれている作品が好きだったので、気付いたら読み終えていました。
一也を演じる上で意識したのは、目の演技です。台詞のない所での戸惑い・同意などの感情の変化を目で表現することを大切にしました。あとは、パソコンに向かって物語を書いている時の表情は、誰も見ることができない、パソコンと自分だけの時間なので、きっと普段は人に見せないような顔をするのではないかと思いながら演じました。
■一也くんはいわゆるヘタレな面がありますが、そこを演じる上で苦労されたことはありますか?
佐藤 そこが特に難しかったです。学生時代の自分と重なる部分が少なかったです。一也は、自分の主張は強いですが、何か言われるとすぐにしゅんっとなるといいますか。痛い所を突かれた時に目に出るという見解が自分の中であったので、そこを凄く意識しました。あとは、ムカつくけどほっておけないキャラクターだと、観ている人に思ってもらえたらいいなと思いながら演じました。
監督と一也の共通項
■久保監督とは『HiGH&LOW』シリーズでご一緒されて、今作は監督たってのオファーだと伺いました。そんな監督が、『HiGH&LOW』で佐藤さんが演じられたチハルと久保監督自身が似ているとおっしゃっているとお聞きしたんですが、佐藤さんはそれを聞いていかがですか?
佐藤 久保さん自身と似ていると聞かされた時は、そうなんだ!と意外に思いましたが、
その一方で、一也と監督は共通点があるんだろうなと。今作を作るうえで監督と2人で「これって小説家だけでなくて、どんな職業でも置き換えられますよね」と話をしたことがあったのですが、その時に500本以上のミュージックビデオを撮っている久保監督でも、若い時代に一也たちのような苦労や挫折を経験されたのだろうなと思いました。それを久保監督からお聞きしたわけではないですが、きっと久保監督には僕には言えないような悩みもあるのだろうなと。本当はもっとそういうのも教えていただきたいのですが(笑)。
佐藤さんと一也の共通項
■では逆に、佐藤さんと一也が似ているなって思う部分はありますか?
佐藤 好きなものに対して一途に真っ直ぐになれる部分は、自分もダンスを始めた時がそうだったので似ていると思います。それこそダンスでスランプに陥ったこともありました。(劇中のように)本を破り捨てたり、部屋に引きこもったり、あそこまでではないですけど、ダンスを始めてすぐの時は、自分の置かれている環境と自分の実力が追い付いていないことを受け止められず、ダンスをやめようと思ったこともありました。そういう部分は、自分ともリンクすると思います。
■高校生で職業に就くって所もある種似ていますよね。
佐藤 確かにそういう面も似ていますね。それこそ、初めてアーティストさんのミュージックビデオに出させていただいた時は、誰にもそういう活動をしてることを言ってなかったですし。そのミュージックビデオが朝の情報番組に流れて、学校で「あれ大樹じゃない?」ってそこで初めてクラスメイトにも知られて、次の日からヒーローになりました(笑)。
■そうすると自分の心持も変わりました?
佐藤 変わりました。
サッカーよりダンスをしたい!EXILEのライブを観てパフォーマーに。
■今回、父親の影響で小説家になる主人公を演じられましたが、佐藤さんご自身がこの業界に入ったきっかけは何だったんですか?
佐藤 ダンスを始めたきっかけは、中学3年生の時に行った、EXILEのライブでした。その時に「ダンスをしたい!」と直感的に思いました。それまではサッカーをやっていたのですが、次の日からサッカーよりダンスをしたいっていう思考になっていました。
でも、芸能へ興味を抱いたきっかけは、鈴木おさむさんが脚本をやられていて、須賀健太くん、香取慎吾さん、加藤浩次さんが出演されていた「人にやさしく」というドラマです。その時、須賀健太くんが僕と同い年だったのですが、まだ小さいのに子役として出ていて、なんかこういう職業って学校に行ったらめちゃくちゃモテるんだろうなって(笑)、最初はそんな単純な理由で、芸能界に入りたい、演じたいと思い始めました。
みんなでご飯に行ったり、毎日のように文芸部で過ごしていた。
■主演を務められたということで、座長として意識した部分はありますか?
佐藤 舞台の時はよく意識するのですが、今回は意外となかったです。というのも、ダブル主演の橋本さんが座長としての役割を自然にやってくれていた感じで。僕の方が(橋本さんより)年上なのですが、現場での居方、盛り上げ方など凄く勉強になる所が多くて、本当に素敵な人でした。
あと、佐藤流司くんが本当に役のまんまというか、ずっとふざけて盛り上げてくれたり(笑)。4人のシーンの合間のカメラが回っていない時も、ずっとみんなで喋っていましたし、撮影が終わってからもご飯に行ったり、本当に毎日のようにみんなで過ごしていたので、誰かがそういう雰囲気を作らなくても、終始順調に進んでいました。
橋本さんは、気遣いもできていて、とにかく頭がいい子
■そんなしっかりされている橋本さんとは今作が初共演ですよね。共演前と共演後で印象が変わったりしましたか?
佐藤 共演前は、本当に詩凪に近くて、勝手にドSなイメージがありました。だから、脚本を読んだ時に、橋本さんがセリフを言っているのが凄く思い浮かんだり、こういう風に演じられるんだろうなって想像していました。いざ共演してみると、若いのに自分の役割を理解していて、それでいてスタッフさんへの気遣いもできていて、とにかく頭がいい方だなと凄く思いました。若くして成功する方って、実力はもちろん、影での見えない努力もしているんだろうなって、人としてより好きになりました。今も友達としてたわいもない話をしながらお酒を飲んだりしています。
■どんなお話をするんですか?
佐藤 仕事の話はほとんどしないです(笑)。
台本より1発多くなるという(笑)。往復ビンタシーン
■橋本さんにビンタされたり、蹴られたりするシーンもありましたが、そういった撮影はがいかがでしたか?
佐藤 最初、橋本さんは「ビンタなんてとんでもないです」って感じで、めちゃくちゃ遠慮していました。でも久保監督が「大樹なら大丈夫だから」って冗談交じりで話をされると、スイッチが入ったみたいで、台本より1発多くなるという(笑)。
佐藤 台本には、3発もなくて(笑)。現場で久保監督が楽しくなってしまってて、「往復ビンタ、今どき見ないから面白くない?」みたいな感じで(笑)。あのシーンは、それまで世間を軽蔑している一也に対して、観ている人もイライラが溜まっているから、観ている人をスカッとさせてほしいっていう意図もあったので、ビンタの数も増やしたのだと思います。でも、すねを打つシーンも実際に命中していて、リアルに「痛っ」って言っています(笑)。
「アドリブが好きな2人だから、ずっと見ていられる」ダブル佐藤コンビ
■同じ苗字の流司さんも初共演なんですよね。
佐藤 そうなんです。流司くんは言ってしまえば、2.5次元の創始者、トップだったので、自分が“逆2.5次元”プロジェクトをやった時に、一番最初に観たのが流司くんが出演していた「刀剣乱舞」でした。最近では、『HiGH & LOW THE WORST』や『貴族誕生 -PRINCE OF LEGEND-』といったLDHの作品にも出ていたので、自然と観る機会もあって、だからキャスティングを聞いた時は凄く嬉しかったです。
■現場ではなんて呼び合ってたんですか?
佐藤 流司くんです。
■何て呼ばれたました?
佐藤 大樹です。
■実際に共演されていかがでしたか?
佐藤 演じるテンポが同じだったので、凄く演じやすかったです。久保監督からも「2人には意外と共通点があるよね。カットがかかるまで芝居を続けたり、アドリブが好きな2人だから、ずっと見ていられる」と言われました。カメラが回っていない時も、ノリが同じだったので、自然と演技にも反映されたのだと思います。
喜び&怒りのシーン
■物語を書く楽しさを思い出して、まなざしがパッと明るくなる瞬間がとても印象的でした。あのシーンはどんな想いで演じられましたか?
佐藤 実は気が付いたらそういう表情をしていたという時も多くて、あのシーンも自然に出た表情なんです。冒頭の白黒からカラーに変わるシーンでは、詩凪のプロットを聞きながらどんどん笑顔になっていくのですが、初めて完成した作品を観て、自分はこういう表情をしていたのだと気が付いたくらいなんです。だから、こうしようと用意していたというよりは、自然とそうなっていたという方が今作は多かったです。
■びしょぬれになりながら、本を破ったり、怒りが爆発するシーンはアドリブもあったとお聞きしました。どんな想いで演じられましたか?
佐藤 あのシーンは、劇中の中で1番一也が惨めで、カッコ悪くみせたいのと同時に、観ている人の心をグッと引き寄せたいシーンだったので、最初は服を脱ぎきる予定だったカットも、惨めさやもどかしさを表現するために服を脱ぎたくても脱げないカットにしました。そして、服が脱げないことでイライラが増して、最終的には何にイライラしているのかわからなくなるくらい感情が剥き出しになっていき、今までにないくらい大声で怒ったり、部屋に入って本を破ることで、観ている人がもっと一也に興味を持ってもらえるように演じました。
■ご自身がそのくらい感情が爆発したことはありますか?
佐藤 あそこまではないです。あまり怒らないタイプなので、気持ちが落ちても感情には出さないです。
■演技であそこまで出してみていかがですか?
佐藤 凄くスカッとしました。普段あんなに叫ぶこともないので、めちゃくちゃ気持ちよかったです。よく声に出すといいって言いますけど、本当だなって思いました。
一也と詩凪だから共作が書けたように、久保組だから完成した作品。
■怒りのシーンもそうですが、今まで演じられた作品とはまた違う役柄で、どこか佐藤さんの本気度を感じた作品でした。佐藤さんご自身がこの作品に出て、改めて得たものや感じたことはありますか?
佐藤 本当におっしゃる通りで。この作品にかける想いは自分の中でも大きいです。数年前にこのオファーをいただいたのですが、本当に自分でいいのかなっていう不安と、久保監督から指名していただいた嬉しさ、そして次のステップへ行くための作品にもしたいという決意など、並々ならぬ想いがありました。正直やるからには、新人賞とかある程度目標を掲げて作品にも挑みたいと思いましたし、監督に監督賞を取ってもらいたいとか、映像美も凄いので、編集賞や音楽面でも、この作品で今までお世話になった方に貢献したいと思い、本気で臨んだ作品です。
■佐藤さんご自身も新しいものを得られるような作品だったんですね。
佐藤 そうですね。作っている段階から、そして完成した作品を観てより思いますし、本当に多くの人に届けたいなと心から思います。
■初号試写の時、監督は泣いていらっしゃったようですね。
佐藤 そうみたいですね。その姿も見たかった。絶対に僕の前では泣かない方なので。
■登場人物たちの感情を表すかのように劇中で流れる楽曲もこの作品の魅力だと思うのですが、実際に完成した作品をご覧になっていかがでしたか?
佐藤 完成した作品を観て、いくつかの章に分かれていたり、登場人物に合った曲を個性豊かに集めて、しかも流すタイミングとかフェイドアウトのタイミングも完璧で、本当に才能しかない監督だなと思いました。それに、章のエピローグで1人1人がしゃべっている後ろで流れる映像も1つ1つ工夫されていたり、細かな演出まで凄かったですし、挿入歌だけじゃなくて、個人的にも好きだった中野雄太さんの音楽も素敵で、音楽に沢山助けられている作品だなとも思いました。
今回通して観て、一也と詩凪だから共作が書けたように、この作品を作るために色んなジャンルのプロフェッショナルの方が集まったからこそ、久保組だからこそ完成したのだと強く思わされる作品です。
韓国の水族館がエモい
■今作は観る人の心を揺さぶるような作品ですが、最近佐藤さんが心揺さぶられたエモい出来事はありますか?
佐藤 今年の年始に韓国旅行をした時に、韓国にある大きい水族館に1人で行ったのですが、その水族館が凄くエモかったです。
冷蔵庫の中が水槽になっていて魚が泳いでいたり、神社風のエリアではお賽銭をするところが水槽になっているんです。そういうそれぞれの魚に合った世界観のあるレイアウトにエモ~って思いながら夢中で見ていたら、2時間くらい経っていいました(笑)。
■普段から結構水族館は行かれるんですか?
佐藤 昔から水族館が好きなので、結構な頻度で行きます。仕事で海外に行ったら、近くにある水族館を調べて行ってみたり。その中でも韓国の水族館は、今まで行った水族館の中でナンバーワンだったな。あとよく温泉も行きます。水がある所が昔から好きなのかな。
■本作では、制服姿が多いですが、普段ファッションのこだわりはありますか?
佐藤 着飾ることがそんなに得意じゃないので、楽が第一優先です。最近は、最低限いいものを着ることは意識しています。あとは、同じブランドを着ることが多いですね。定期的に展示会に行って、そこで頼んだものを着るみたいな。
でも、アクセサリーはこだわっていて、自分でオリジナルでカスタムするのが凄く好きです。買い物をしていて、いいなと思うピアスがあると癖でブランド問わず買っちゃいます。
■ではポイントでのこだわりはアクセサリーなんですね。
佐藤 アクセサリーです。ピアスも去年空けたので、それからというもの一目ぼれで結構買っちゃいます。
自作した神棚に毎年新しいお守りを置いています。
■作品のタイトルの『小説の神様』にちなんでお聞きしたいのですが、佐藤さんは神様を信じますか?
佐藤 めちゃくちゃ信じています。だから本当はいけないのかもしれないのですが、色んなお守りを買っちゃうタイプです。
■結構神社も好きですか?
佐藤 めちゃくちゃ行きます。芸事や健康など、沢山のお守りを持ち歩いています。家では自作した神棚に毎年新しいお守りを置いて、お正月に買う破魔矢もちゃんと新品のものを置いています。
■それは実家でもやられていたんですか?
佐藤 逆に上京して一人暮らしを始めてからするようになりました。
■そうなんですね。そんな神様を信じている佐藤さんですが、タイトルを聞いた時どう思いましたか?
佐藤 一也と同じで、「小説の神様」ってなに?とシンプルに思いました。でも、僕は神様を信じている方なので、素直に詩凪の言うことが入ってきました。それに、作品を作っていく中で久保監督に「今のシーンでの2人の神様ってなんだと思う?」って聞かれたりするんです。そういう凄く難しい質問を何度かされていたので、案外すんなり受け入れられました。
■ありがとうございました。
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佐藤大樹
1995年1月25日生まれ。埼玉県出身。
EXILEとFANTASTICS from EXILE TRIBEメンバー。アーティスト活動の他にもドラマ出演など俳優としてもマルチに活動中。
主な出演作は、日本テレビ系ドラマ「ワイルド・ヒーローズ」(2015)、日本テレビ系ドラマ「HiGH&LOW THE STORY OF S.W.O.R.D.」(2015)。また初出演舞台「錆色のアーマ」(2017)では初主演を務めた。
―INFORMATION―
【映画『小説の神様 君としか描(えが)けない物語』】
2020年10月2日(金)全国公開
出演:佐藤大樹(EXILE/FANTASTICS)、橋本環奈、佐藤流司、柴田杏花、莉子、坂口涼太郎、山本未來、片岡愛之助、和久井映見
原作:相沢沙呼「小説の神様」(講談社タイガ刊)
監督:久保茂昭
脚本:鎌田哲生
主題歌:『Call Me Sick』 伶(Sony Music Labels Inc.)
<ストーリー>
中学生で作家デビューしたが、作品はSNSで酷評され、自分を見失った売れない高校生小説家・千谷一也。一方、同じクラスの人気者でドSな性格の上、ヒット作を連発する高校生小説家・小余綾詩凪。底辺作家と人気作家、性格もクラスでの立ち位置も、すべてが真逆の2人に、編集者から下されたミッション――それは、2人で協力し、大ベストセラーを生み出すことだった! ダメな男子とキラキラ女子、一見正反対な2人が、反発しながらも足りないものを補い合い、物語を一緒に作るうちに、一也は、詩凪の誰にも言えない大きな秘密を知ってしまう――。友情を超えて近付く2人の距離。悩み傷つきながらも、好きなことをあきらめずに挑戦し続けた先で、2人が生み出す<物語>の行方は――?ラスト、胸があつくなる。共感と感動No.1のファンタスティック青春ストーリー!
[HP] https://shokami.jp/
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