<イベントレポ>菅田将暉「一緒に登壇できて光栄です」黒沢清監督のお祝い♪ 撮影の裏話なども!映画『Cloud クラウド』受賞記念トークイベント



第81回ヴェネチア国際映画祭で観客を熱狂の渦に巻き込んだワールドプレミアにつづき、第49回トロント国際映画祭への出品、そして第97回米国アカデミー賞国際⻑編映画賞の日本代表作品にも決定!アジア最大級の映画祭の釜山国際映画祭では、同祭のメインプログラムでありその年の話題作や世界で影響力のある監督の新作を上映する「ガラ・プレゼンテーション部門」の上映に選出されるなど、ますます盛り上がりをみせる映画【Cloud クラウド】が全国公開中。そして、第29回釜山国際映画祭にて「アジアン・フィルム・メーカー・オブ・ザ・イヤー賞」を受賞した黒沢清監督をお祝いする【受賞記念トークイベント】が2024年10月15日(火)に開催され、主演の菅田将暉と黒沢監督が登壇した。

本作は、ネット社会に拡がる見えない悪意と隣り合わせの“いま”ここにある恐さを描くサスペンス・スリラー。転売で稼ぐ主人公・吉井良介を菅田将暉、吉井の謎多き恋人・秋子役を古川琴音、吉井に雇われたバイト⻘年・佐野役を奥平大兼、ネットカフェで生活する男・三宅役を岡山天音、吉井が働く工場の社⻑・滝本役を荒川良々、そして吉井を転売業に誘う先輩・村岡役を窪田正孝が演じている。



登壇早々、菅田は「公開してからこうやって少し期間が経って、また舞台挨拶ができるっていうのは本当に幸せなことで、 嬉しい限りです。」と感謝のコメント。「そして黒沢監督、おめでとうございます。世界中にファンの方がたくさんいて、今さらかもしれないですけど、すごく嬉しい気持ちです。」と黒沢監督へ祝福のメッセージを贈った。

黒沢監督も「公開してだいぶ経つんですけども、このようにたくさんのお客さんに来ていただいてとても嬉しいです。今日初めて観る方もいらっしゃいますでしょうし、ひょっとするともう何回かご覧になってる方もいらっしゃるかもしれません。何度も色々に観れるように作ったつもりですので、ぜひ今日が初めての方も、この後も何回か観ていただくととても嬉しいです。」と感無量な心境を明かした。



映画祭について聞かれた黒沢監督は、レッドカーペットについて「10メートルぐらいかなっていうつもりで行ったんですけどね、3・40メートルあったから、まっすぐがすごく長くて・・・」「どこを歩いていいのかだんだんわからなくなるんですよ。」と苦労したと告白。「ああいうとき、どうしたらいいですかね?」と菅田に問いかけると「持ち無沙汰に確かになりそうですね。」と共感しながらも「多分僕はそれとない笑顔でやり過ごすと思います」と菅田らしく返答した。



釜山国際映画祭では菅田が出演しているNetflixシリーズ「寄生獣 ザ・グレイ」のヨン・サンホ監督とも会談をしたようで、そこでヨン監督が「菅田将暉は単にうまい俳優というのではなくて、映画を支配する力がある」と表現したそう。その言葉に共感した黒沢監督が「あまりにいい表現なので、それ以降取材を受けると『菅田将暉って映画を支配するところがあるんですよ』って言うことにしているですけど・・・」と語り、笑いを誘った。冗談交じりに語りながらも、誰が主演を務めるかわからない状態で脚本を書いた中、取材で「菅田将暉さんをイメージして脚本を書いたんですか?」と問われることもあることから、ヨン監督の言葉が的確に感じられたようだ。

ヨン監督については菅田も「寄生獣しかり日本のカルチャーにもすごく詳しいし、映画だけじゃなく元々アニメーションの作家さんでもあるんで。だからまずリスペクトがすごくあるなと思いましたね、日本の作品に対して。だから当然黒沢さんの作品も大好きっていうのもわかりますし。しかも特に日本の中でもホラーとかスリラーとか、ちょっと怖い作品がタイプみたいで、そこを熱弁してる印象でしたね。」と印象をトーク。加えて「作品は結構怖かったりスリラーのものが多いですけど、人柄としてはすごく柔らかくてフランクで、仕事が終わったらすぐ帰って『お父さんを僕はやってるんだ。』って。」と温かい人柄についても言及。黒沢監督も「見た目も八百屋さんみたいな・・・悪い意味じゃないですよ、いい意味で。すごく庶民的な感じもする。その分、こちらもすごく話しやすいですよね。」と語ると「そうですね!わかります。」と菅田も共感していた。また、韓国料理の漬物“チキンム”に一時期ハマっていたという菅田は、ヨン監督ともその話題で盛り上がったそうだ。



続いて、観客からの質問へ菅田と黒沢監督が答えるコーナーを実施。本イベントは上映前に行われたが、すでに5回以上見てるという人もちらほら。質問ボックスはネタバレありorなしの2つのボックスが用意されたが、多数決の結果、ネタバレ箱ありの箱から質問を行うことに。



ネタバレが嫌な人への配慮で耳をふさぐようにジェスチャーする菅田

1つ目の質問は「この映画でもらった1番嬉しい感想、または嬉しかった感想はありますか?」。菅田は「同業じゃない友達たちが『めっちゃ面白かった!次会うときなんか話聞かせて!』みたいな、このテンションの“面白かった”は初めてかなって。『泣いた。面白かった。ありがとう。』みたいなテンションではなく『すごい良い時間だった!』みたいなテンションの“楽しかった”は初でしたね。嬉しかったですね。1つのカルチャーとして、楽しんでくれたんだなって感じはしましたね。」と友人からのメッセージをピックアップ。

黒沢監督も「『びっくりした。今の日本映画でこんなのあるんですね。』 っていうのは嬉しかったですね。公開よりもっと前の試写会でご覧になった方で、何の予備知識もなくご覧になったらしいんですけど 『まさかこんなことだとは思わなかった。びっくりした。』っていうのは嬉しかったです。」と嬉しそうに語った。

加えて「意外と語彙力を失ってる系の感想も嬉しかったですね。」と菅田。『何あれ!?』『なんて言えばいいかわかんないけど、なんか楽しかった』のような言葉も多かったようで嬉しかったとコメント。



2つ目の質問は「この映画を2回目以降に観る方に『ここに注目してみてほしい』というところはありますか?」。黒沢監督は「2回目、少し落ち着いてどんなふうにできてるのかっていうとこまで関心持って見ていただくとするなら・・・」と前置きしつつ「どんな音楽がどこで入ってくるかなんていうのをちょっと気にしていただくと」とこだわりの音楽面に関して注目してもらうようにアドバイス。それを聞いた菅田は「僕、新しく家を変えた時にかかる音楽とかすごい好きでした。こんなおしゃれなフランス映画に出れて・・・みたいな気持ちに一瞬なれたんですよね、あの瞬間。」と振り返った。

また菅田は「冒頭の赤堀さんを忘れないでほしいってことですかね」とコメント。黒沢監督も「冒頭の赤堀さんにはちょっと記憶にとどめてると嬉しいです。」と付け加えた。



3つ目の質問は「ラストのシーンで私は(菅田が演じる)吉井の顔にゾッとしたのですが、一緒に見に行った娘には笑って見えたようです。それにもゾッとしました(笑) 実際には菅田さんはどう映るように心がけていたのでしょうか、また、黒沢監督から何か指示はあったのでしょうか?」

脚本ではふっと笑ってしまう程度に記載されていたそうだが、現場では特に指示はしていないと黒沢監督。「ああ、なるほど。うまいな、こうするんだというのを見ていて思い出しました。決して笑ってはいないんですが、“ふっ”ていう笑い声は出してるんです。笑い声を一瞬ふっと出して、しかし顔は笑ってないっていう絶妙なお芝居をされています。それと同時にだんだん照明も暗くなってきて、顔がアップにはなってますけどだんだん表情が見えにくくなって、最後には目の印象だけが残って終わるという風になっているので。良い質問だと思いますよ。笑ってるのか笑ってないのかわからない。だからどこを見ているのかも、どこかをじっと見てるんですけど、どこを見てるのかー気になるみたいな感じですかね。」と菅田の演技を絶賛。

このラストシーンは、後半の銃撃戦やアクションシーンの前に先に撮影したそうで、演じた菅田自身も「(物語の先が)どうなるんだろうみたいな。わからないけど、心身ともに心も体もボロボロになった先に、スッキリではないけど、乗り越えたわけでもないんだけど、 達成してしまった。それこそこのクラウドという不特定多数の人から、一歩を超えた何者かになってしまった、潔さみたいなのは意識してたイメージですかね。」と当時を振り返った。

また「奥平(大兼)くんがうまくやってたんですけど、奥平くんがちゃんとやってくれるかどうかだけがものすごい気になっていて。」と黒沢監督。「『菅田さんは気になるけど・・・ごめん!菅田さん任せた!』って感じで、ちょっと奥平くんばっかり気になってたっていうのは正直ありましたね。」と告白していた。この初日の撮影時の奥平の私服が全身真緑だったことも菅田から明かされた。



最後の質問は「銃撃戦になって・・・最後の鋭い目つきの表情が違いすぎていてすごいなと思いました。表情に関して、黒沢監督からの演技指導はあったのでしょうか?」

2人ともおぼろげな中、奥平に菅田が引っ張られて歩いていくシーンで「ここが変わり目ですから、 よろしくお願いします。」と言った記憶があると黒沢監督。「まさにあそこがうまくいったんで大丈夫だと思った記憶があります。あの辺りから吉井があるレベルに突入してしまって、もう戻れない感じになってる。下を向いてとことこ動いてるのから、最終的にはちゃんと前を向いて走るまでを横向きのワンカットで撮りました。」と振り返った。

菅田は銃を2丁持って歩くシーンで「どうやっても無様で・・・前の目になりすぎて、ちょっと恥ずかしかった(笑)」と照れながらも全身でその様子を表現してくれた。



最後にこれから映画を観る人へメッセージ。「本日は観に来てくださりありがとうございます。黒沢監督の受賞記念舞台挨拶という嬉しい機会に一緒に登壇できて光栄です。あとはお客様に楽しんでいってもらえたらなと思います。よろしくお願いします。」と改めて感謝の想いをコメント。

黒沢監督は「まさにさっきヨン監督が言ったように、菅田将暉が支配する、そんな映画です。決してハッピーな映画ではないかもしれませんが、このダークな菅田将暉を存分に楽しんでいただければ。人はバタバタ死んだりするかもしれませんが、あまりそこは目くじら立てずに、映画だからということで気持ちよくこのダークな世界を味わってください。今日はありがとうございました。」と投げかけ、本イベントは幕を閉じた。




フォトセッション時には、黒沢監督は賞のトロフィーを持って撮影。菅田にも持ってみるように促すと「いいんですか?結構重いですね。」と感触を確かめながらも「落としそうなので・・・」とすぐに返却していた。



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■詳細
【映画『Cloud クラウド』】
公開日:TOHO シネマズ日比谷ほか全国公開中
監督・脚本:黒沢 清
主演:菅田将暉
出演:古川琴音、奥平大兼、岡山天音、荒川良々、窪田正孝、赤堀雅秋、吉岡睦雄、三河悠冴、山田真歩、矢柴俊博、森下能幸、千葉哲也、松重豊
製作幹事:日活 東京テアトル  
配給:東京テアトル 日活    

©2024「Cloud」製作委員会

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